女王の朔望月 (ページ24)

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ぼふっと重い体をベッドに沈める

＿＿＿＿結局兄者は何も教えてくれ無かった

今となってはあの時の“分からない”もさっきの“知らない”も本当かどうか分からない。

けれど、

どうしても電話で口にした“またな”の言葉が引っかかる。

もし急に連絡が取れたなら、会えるかどうか不確かな彼女に向かって次の約束を助長させる様な言葉は言えなかったはず

｢(……じゃあやっぱ知ってたんだ)｣

俺がどれだけ再会を熱望しているか、
どれだけ彼女を想っていたか、

それを全て知っていて

あいつはAの事を隠そうとした

｢ほんと最悪、｣

さっきかららしくも無く頬を伝う雫を乱暴に拭って布団で顔を隠す

上がっていた気分はあの日の様にどん底で、もう何も考える気力さえ出てこない。

無気力になり、ぼーっとし始めた頭に身を任せる

身体が完全に脱力した時

＿＿＿＿＿＿急に辺りが暗くなった。

ハッとして周囲を見回した時、目に映ったのはピアノと窓の外に浮かぶ月

……学校の音楽室だろうか。

静まり返ったその場にいるのは自分だけで他には誰も居ない

本来であれば静かな空間は居心地が良いはずなのに、異常なまでに静かなこの場は返って恐ろしく物悲しい

どうして俺はここにいるんだろう、

いや、
＿＿＿こんな寂しい場所に居なければいけないんだろう

肌に感じる嫌な予感に目を瞑り、深呼吸を1つしてピアノへ歩み寄る

｢(……大丈夫。俺は独りじゃない)｣

ピアノを弾いて彼女の存在を感じれば、きっとこんな不安も拭いきれる

そう意を決してピアノの前に立った刹那ある物(・・・)が目に入る。

鍵盤蓋の上に置かれたそれは小さな長方形で材質のいい無地のメッセージカードだった。

“凛月へ”

しかも見覚えのある綺麗な文字で自分の名前が綴られている

｢(……あー、……やだな)｣

どんどんと大きくなる嫌な予感と膨らむ不安に僅かに手が震える。

それでも好奇心と焦りには勝てなくて、震える手でメッセージカードを裏返してしまった

｢(…………ねぇやめてよ、)｣

“さようなら”

そこに書かれていたのは最愛の人のたった1つの別れの挨拶だった