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｢(A！！)｣
｢うぅおおお！！……びっくしりた、｣
｢……あれ、まーくん、｣
気づいた時に腰を抜かし、“はよ、”と目をまん丸くしている幼馴染が隣に
追いつけない頭で辺りを見回せば外は明るくなり、僅かだけど小鳥のさえずりも聞こえてくる。
月明かりだけが差し込む、暗くて静かな場所はここにはもうない。
｢(……久しぶりに見ちゃった)｣
夢。
と言えば夢になる。
けれどあれは紛れもなく自分が体験した過去で、曲げようのない現実
＿＿＿＿＿そう。
彼女はあの日姿を消した。
“さようなら”なんて酷すぎる別れの挨拶だけを紙面に残して
独りで喉が枯れるまで泣いた記憶が未だ鮮明に残っている
｢…………はぁ、｣
｢寝るな寝るな！珍しく自分で起きたんだからそのまま支度しろよ！？｣
｢無理｣
｢はぁ！？｣
腰を擦りながら叫んで布団と格闘技を始めるまーくんから布団を守る
……あの夢を見た後にどうやって元気で動き回るんだろ
あれが夢ではなく現実で起きた次の日、俺は体調不良で学校を休んだ。
受け入れたくなかった
＿＿＿彼女と会えなくなった現実を
＿＿＿想いが届かない現実を
ようやく立ち直って兄者や他の人に理由を聞いてみても全員“分からない”、“知らない”の一点張り
その一連の出来事でどれだけ心が折られたか、
彼女の居ない日々に慣れるのがどれだけ辛かったか、
なのに。
Aは兄者と繋がってた
暗闇の中手探りで探し続ける俺を無視して。
＿＿＿＿＿拒絶
そんな言葉が相応しい
｢……ねぇまーくん｣
｢んだよ〜……起きてくれよぉ〜……｣
俺はどこで間違えたのかな。
いつ嫌われたのかな。
｢…Aの目には兄者しか映ってなかったのかな｣
｢っ、｣
｢……もう分かんないよ｣
何度目か分からない雫の滴り落ちる感覚に被せていた布団を更に深く被せる
俺の問いに返す言葉を無くした幼馴染はもう格闘技をする気力は無い様らしい
｢、なぁ凛月｣
｢……なぁに｣
本気でサボろう。
……そう思ったのに、
｢Aはちゃんと凛月の事見てたよ。朔間零の弟じゃなくて1人の人間朔間凛月として｣
｢でも、｣
｢学校行こうぜ！可能性は薄くても俺たちが行かない事には絶対会えないからさ｣
もう一度力強く布団を引っ張り、
太陽に似た笑顔で彼は笑う
｢お前なら絶対会えるよ｣
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作者名：八月蝶 | 作成日時：2023年3月3日 23時
