女王の朔望月 (ページ22)

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＿＿0時30分

空が真っ暗になり、月の光だけが差し込む廊下を1人で歩く

お風呂上がりの火照った身体を鎮めるにはちょうどいい温度感の廊下は青白く照らされ、ようやく本領発揮出来る時間帯になった事を教えてくれる。

感覚的に明日。日付的には今日。
待ちわびた円形を迎える。

その円形は彼女と約束を築き、
彼女との関係を引き裂いた

愛しさと憎さと言う相反する気持ちが同時にそこにあるのに

どうしてだろうね、

いつだって愛しさが勝ってしまう。

｢(……あーあ。俺浮かれてる)｣

彼女がもう一度現れてくれるかなんて分からない。
むしろ現れない可能性の方がよっぽど高い。

なのにどうしても心が弾んでしまうだからどうしようも無い

そのせいか自然と廊下を歩く足取りも軽くなって最早スキップでもしだしそうな勢いの自分が面白い

｢(願掛けで何か弾こうかなぁ...♪)｣

月光か、月の光か、ノクターンか、
どれにしようかと、ピアノが置かれた部屋目掛けて歩き出した時、

ふと、自分の足元を照らす別の光がある事に気づく。

｢(うげ、兄者いんの……)｣

その光は隣の部屋の隙間から漏れ出ていたもので、残念な事に月の光とは正反対なまでに嫌気の差すものだった

しかも

同じ屋根の下で呼吸しているだけでも耐え難いのに、気分が上がっていた今日に限って部屋から聞こえる話し声

大方誰かと電話しているんだろうけど
声が妙に弾んでいる。気がする。

｢(……きも、)｣

自分と全く同じタイミングでテンションが高い事に虫唾が走り、逃げるようにその場を後にしようとした時だった。

｢……あぁまたな。｣

｢至高の愛を

＿＿＿＿＿＿A｣

俺の全てを壊す言葉が聞こえたのは。

なんで

ねぇ、なんで

なんであんたがAと話してるの？

何も知らない、分からないって言ったじゃん。

あれは嘘だったの？

＿＿＿＿ねぇA答えてよ、

俺と会ってくれない理由はなに、
俺と話してくれない理由はなに、
俺を捨てた理由は、

ねぇA

｢.....会いたいよ、｣