21:二人の人間。 ページ21
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「いやぁ、何がともあれ、みんな無事に終わって善かったねぇ」
『鏡花ちゃんと敦くんは何処か行ったんですか?』
「仕事だ」
「A聞いてよ」
行方不明だった賢治は見つかり、再び探偵社に束の間の平穏な日常が戻ってくる。
組合は探偵社にメッセージを送ってきている。
これで終わりのはずはないのだ。
『今頃、落ち込んでるんでしょうね、鏡花ちゃん』
「何故そう思うのだい?」
自分の席に腰掛け、御馴染みの甘い珈琲を飲んでいるAは明後日の方向を見てそう云う。
太宰は、同じことを考えているにもかかわらず、彼女にその言葉の真意を問うた。
『あの子に人助けは向いてませんよ』
「君も案外、酷いことを云うねえ」
事実でしょう?、とマグカップに口をつけるAは、悪気はなさそうだった。
『今はまだ、ですけどね』
「そう云うと思ったよ」
太宰は、Aの本音にうふふ、と笑う。
それにつられてAも少し、微笑んだ。
彼等にしては珍しい、意思疎通だった。
『人はそう簡単には変われない、そんなのは嘘だと私は思ってます』
身近な人に相当変われた人がいますし、と彼女は太宰に視線を向ける。
彼の前職を考えてみると、全くその通りだろう。
マフィアと探偵社、その仕事内容は真逆である。
『実質、私もその類の人間です』
「君も、大きく変わったのかい?」
『人助けなど、しようと思ったこともありません』
そう云って、Aはそっと目を伏せた。
彼女が話そうとしない、それを太宰が追求することはない。
『まぁ、それに反して、国木田さんは全然変わってませんね』
「前職を聞くと、納得するものね」
「珍しく真面目な話をしていると思った俺が莫迦だった」
話を逸らす為に国木田に話を振ったと見えるAに太宰ものる。
これが太宰なりの優しさなのだ。
そしてそれにAは気づいている。
この関係が、二年間一番側にいた二人が築いたものである。
と、此処で国木田のパソコンが何かを受信する。
『ふふ、来ましたね』
「鏡花の電話に着信があった。俺と賢治で向かう。お前たちは待機だ」
信号を受けてから、ものの数秒で出て行った国木田と賢治。
残されたのはまた、この二人である。
『また太宰さんですか』
「運命だね」
『違います』
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ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時