22:社長の指示。 ページ22
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『二人とも無事ですか?』
国木田たちが社を出て数十分。
組合の攻撃を受け、負傷した三人を回収し、与謝野に預けたのはAだった。
彼等の危機を察知した彼女の勘は、矢張り流石である。
『私が回収に行かなかったら死んでましたよ?大いに感謝してくださいよ、国木田さん』
「……」
Aが期待を込めた眼差しで国木田の周りをちょこちょこと動き回るが、彼はそれに全く反応しない。
「工合は如何だ」
「社長、申し訳ありません。俺がいながら」
『扱いの差が酷すぎます』
こんな状況でも、探偵社が無意味な焦りを見せない理由。
それは、Aの能天気さにあるかもしれない。
「少し出る」
「でも今外出は…」
「A、此処は頼んだ」
『了解です』
敦の制止など聞く耳も持たず、外へ出て行った福沢。
与謝野曰く、相当鶏冠に来ているらしい。
社員に手を出されたことは、社長として許すことができないのだろう。
『じゃあ、私は事務員さんたちに避難の指示を出します』
福沢が出て行き、静まった社内にAの声が響く。
彼女には、言葉にしなくとも福沢の指示が判るのかもしれない。
公になっていない事実だが、過去を共にしてきた故なのだろう。
『国木田さんは社長からの連絡が来た時、それに対応してください。その他の方々は書類の整理をお願いします』
予測が得意な太宰と、状況判断力に優れたA。
問題児ツートップである二人の実力は危機に直面した時にこそ発揮される。
真面目な顔をした二人ほど珍しいものはないが、だからこそ信頼できるのだ。
「次はどのように」
全てが終わった頃、福沢からの連絡が国木田へと行く。
《調査員は全員社屋を発ち、旧晩香堂に参集せよ》
国木田により、福沢の指示が社員たちに告げられる。
社員たちは慌ただしく動き出す。
「A、太宰を呼んでこい」
『そうやって太宰さんのことを全て私に任せるのはどうかと思いますよ』
「黙って行け」
この緊急事態時、真面目な国木田がAの文句に一々言葉を返すことはない。
Aは渋々医務室へ向かい、ドアに手をかける。
『いや、鍵かかってますし』
取り込み中だと知りながらも、彼女はわざとらしくドアノブをガチャガチャと回し続けた。
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ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時