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「十五年後の未来……？」
『えぇ』
敦の呟きに、Aは小さく頷いた。
その表情は今までの無邪気さを持たず、穏やかで優しい笑みだった。
突然の話に、驚きを隠せないのは当たり前である。
事例がないこの状況、信じろと言われる方が無理な話だ。
『一つ、話を聞いて欲しい。十五年前、当時齢四の少女の話を』
客観的な話の入り。
だが二人はその少女が誰だかわかっていた。
寧ろ、それがA以外の誰かであるわけがなかった。
まず、ある男の話をしようと思う。
男は横浜を拠点とする、ある組織の人間だった。
殺しも含めて、何でもする少数の集団だった。
ではなぜ、そんな組織がマフィアに消されなかったのか。
それは至って簡単な話なのだ。
男が人を思い通りに動かせる、異能者だったから。
必要な陣営以外は皆駒で、使い捨てだったから。
その上彼は非常に慎重で、何年も先の未来を見据えて行動する人間だったから。
そして話は本題へと移る。
一人の少女が、その男に育てられていた。
口ぶりからきっと、赤ん坊の頃から。
少女は愛されてはいなかった。
何故なら彼女も、どこかの未来で使われる駒に過ぎなかったから。
そして少女が四つになった、横浜の海に白鯨が落ちた頃。
それと今回の話が関係しているかはわからない。
少女にしても、知らないことだ。
だがその頃の何かが男は気に食わなかった。
だから子供の仕返しのように、意味のない復讐を計画した。
ここから彼の作戦が始まる。
少女は擂鉢街の路地で、3日ほどある人を待った。
男に言われた通り、いつ来るかもわからない人物を。
そしてその人が現れた時、ただ一言、言ったのだ。
______おにぃさん、おなかがすいたの。
彼がそれを無視できないと、知って。
擂鉢街には、親を持たぬ子が多くいた。
声をかけられた少年、中島敦はそれを知って、少女の手を握り食事を与えた。
その後凡ゆる情報網を駆使し、素性を調べ、身寄りがないことを知った。
知った上で、名を与えた。
中島A、と。
それから敦は彼女の父として、Aは彼の娘として、親子ほどの年は離れていないものの、本当の父娘として生活をした。
母代わりの泉鏡花を加えて。
幼い頃の記憶は基本的には残らない。
だから少女の記憶は、中島Aからのものしかなかった。
思い返すのはいつも血の繋がらない二人に愛されて、幸せな日々だけだった。
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砂木雲雀 - 感動しました…！久しぶりにとってもいいお話を読めた気がします。ありがとうございましたぁあ…！！！ (2019年6月23日 14時) (
レス) id: f363e24a01 (このIDを非表示/違反報告)
真綺 - めっちゃ感動しました!! ありがとうございました!! (2019年6月23日 13時) (レス) id: 06efcbf80c (このIDを非表示/違反報告)
柊まふ(プロフ) - とても 泣きました……！神作品を、ありがとうございます (2019年6月23日 12時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろろみや。
| 作成日時：2019年6月23日 2時
