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 彩が、手を伸ばしてくる。

 そっと、その柔らかな手が、頬に触れてきた。



「………」





 頬に踊るその感触が心地よくて、
 そっと目を閉じる。





「黒木君……」


「なに?」





 視界を閉ざしたまま、その軽やかな声に耳を傾ける。

 二人が横たわるベッドが、微かにきしんだ。




「黒木君が、ずっと………

 顔を強張らせて生きてきたのが、凄く分かる」





 突然何を言い出しているのか。


 薄く目を開けると、彩が、その大きな瞳で見ていた。


 細い指が、スーッと、頬を撫でる。



「今も、ちょっと、表情が硬い……」

「……そう?」




 自覚していなかったが、そうなんだろうか。

 それでも、いきなり力を抜こうとしても、どうしていいのか分からない。



 困惑していると、彩がまた、囁いた。





「いつだって、そう。


 黒木君は、どこか、仮面をかぶっているみたいだった。
 子供の時も、大人になった今も」




 薄暗い部屋。

 闇の隙間に見える彼女の顔は、何故か泣いているような悲しみを帯びていた。





「なんでだろって思ってた。

 私たちの前で、何を、緊張することがあるんだろうって。


 心を開いてくれてないのかな、って思ったこともあった」


「それは、ないよ……」

「うん。今は分かってる」




 ずっと指先で撫でていた彩の指が、すっと止まった。


 手のひらで、そっと触れてくる。


 まるで、包み込むかのように。





 
「緊張してたんじゃなかった。
 あなたがずっと耐えていたのは……


 涙だったんだね」



「………え……」



 思わず、擦れた声が出た。



「緩めたら、泣いてしまうから。

 他人の前で泣くのが不本意だったんだよね」





 触れている彼女の手は、暖かくて。


 母親の手とは、こういうものなんだろうかと、

 どこか、頭の端で思った。


03→←愛のカタチ 01(Kuroki side)



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ハナ - 恋檬さん» 私もあげたいです!!!! (2017年12月16日 21時) (レス) id: a28dd52497 (このIDを非表示/違反報告)
恋檬(プロフ) - スマホが欲しいアーヤにスマホをあげたいよお!!! (2017年10月22日 11時) (レス) id: a868e82522 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ - @恋歌さん» 花畑ですよ!読んでくださっているのですね、ありがとうございます。憧れだなんて…恐縮です。私こそ、読者様のコメントにはいつも励まされています。凄く嬉しいです(#^.^#)応援ありがとうございます。頑張ります!! (2017年10月22日 9時) (レス) id: 74426fb86e (このIDを非表示/違反報告)
@恋歌 - 花畑さんですよね?違ったらすいません。 (2017年10月1日 16時) (レス) id: 2a50b7073d (このIDを非表示/違反報告)
@恋歌 - これからも、応援しています。頑張ってください! (2017年10月1日 16時) (レス) id: 2a50b7073d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年8月11日 14時

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