81曲目 who ページ31
口内に暖かい何かが流れ込んできた。
…ああ、私坂田さんにキスされてる。
頭はお酒とこの状況でくらくらして、まともに考えることもできない。
口移しされているのは…お酒?
お酒のおかわりですか。これ以上はきついなぁ。
そんなことを呑気に思いながら、何も考えずにそれをそのまま飲む。
まただ。何処かで感じたことのある。
私を押し倒して見下ろすセンラさんの顔も、坂田さんから直接貰うこの感触も。
そしてそれらを求める私。
頭が、ズキズキと痛む。
これは、お酒のせいだろうか。
痛んで仕方ないので、私は考えることを放棄した。
「美味い?」
「はい、とても」
「ああ、良かった。
そのとろんとした顔好き…もっと」
安堵したように息を漏らし、再び顔を近づけてこようとした坂田さんを、センラさんが止める。
「俺のもんに何しとんの?」
「…センラこそ、Aは僕のものなんやけど」
「いや俺がこいつの所有権持ってんだけど?」
「何お前ら勝手ほざいとん。俺のや」
いつの間にか起きていたうらたさん、坂田さんの拘束から逃れた志麻さんも混ざり、私の話であるにも関わらず私を置いてけぼりにして話を進める四人。
「したら、Aちゃんに誰にするか決めてもらいましょうや」
「せやな、センラ。皆もええやろ?なぁ、志麻君」
「ああ。寵愛を授かるのはたった一人」
「俺か、志麻か、坂田か、センラ。
誰にする?A」
四人が、私の方を一斉に向く。
その顔は、皆正気じゃない。
光を含まない、暗い瞳が私を捉える。
「俺にするよな?」
「俺にしとき?」
「僕にしてよ」
「俺にしろ」
「えーっと…」
てことで今ここです。
そんなことを言われても。
つい最近、皆が家族として好きだと自覚したばかりなのに。
やはりそれでは駄目なのか。
この気持ちに、ケリをつけなくてはならないのか。
「私は…」
いや、まだだ。
「私は恋愛的な好きとかありません」
まだ、このままでいたい。
まだ、五人でいたい。
そう、私の心が叫んでいる。
「だから、私は、誰も選べません」
そう言った次の瞬間。
突然の睡魔に負け、私はぱったりと意識を手放し、床に突っ伏した。
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Shooto_Keeki(プロフ) - たまたま見つけて読んでました。もう本当に最高でした、最後の展開で泣きそうになっちゃいましたよw (2019年9月22日 19時) (レス) id: 7c93d27e64 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 時雨さん» 最後までお読みいただき、ありがとうございました!涙だなんて、そんなに感動していただけてとても嬉しいです…! (2019年1月31日 9時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても凄くて感動しました…!!(語彙力低下)最後涙が…;;素敵な作品、読ませていただきありがとうございました…!!!!!! (2019年1月31日 0時) (レス) id: 274b7ae121 (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 夢愛-ゆあ-さん» 長編になっていますが、最後までお読みいただきありがとうございます!泣いていただける程感動してもらうことができ、私もとても幸せに思います。わざわざコメントまでいていただき、ありがとうございました! (2019年1月7日 22時) (レス) id: 56a129691b (このIDを非表示/違反報告)
夢愛-ゆあ-(プロフ) - とても面白くて一気読みしちゃいました…!最後の方は感動で涙が止まりませんでした…(涙)実は小説を読んで泣いたのって初めてで自分でびっくりしてます(((それほど素敵な小説に出会えて幸せです!今から番外編も読ませていただきます!長文失礼しました!! (2019年1月7日 19時) (レス) id: b3b95c5e04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽飛 | 作成日時:2018年11月14日 19時