第五十二話 ページ6
今日は蘭ちゃんと竜ちゃんが帰ってくる日だ。
せっかく二人が帰ってくるのに雨だなんて、ついてない。
……竜ちゃん、あのときどうして私を見てくれなかったのかな。
それだけがどうしてもわからない。
帰ってきたら、ちゃんと話そう。
目を見て、ちゃんと。
インターホンが鳴って、Aはドアを開けた。
その先にいたのは……
「あっ、母さん……久しぶり……」
「…そうね。今日はあなたに話があってきたのよ。」
「取り敢えずあがって。」
……母さん、私のこと嫌いなんだよね。
なんで急に家に来たのかな……?
それに話ってなんだろう。
母さんとは殆ど話したことないから、何を考えてるのかわからないし、ちょっと怖い。
「……意外と片付いてるのね。」
「うん。蘭ちゃんがすぐ散らかしちゃうけど、今は一人だから。」
「そう。……あなた、左手の薬指につけてるソレ、誰に貰ったの。」
冷たい瞳で見つめられ、Aの肩はビクリとはねた。
「え、これは……竜ちゃんから貰ったよ。」
「竜胆?」
Aはコクンと頷いた。
「あなたもあの母親と同じなのね。そうやって人の大事なものを……」
「母さん…?」
「私を母さんなんて呼ばないで……!!」
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年10月16日 19時