第五十三話 ページ7
俺と兄貴は出所して、今家に帰ってきた。
玄関には誰かの靴。
けどソレは見覚えのあるものだった。
母さん…?
リビングに向かうと、話し声が聴こえてきて、扉を開けた。
「私を母さんなんて呼ばないで…!!」
「でも…」
「アンタは私の子じゃないの!!アンタは父さんが連れてきた子よ!!あの疫病神の……
「!?」
「竜胆や蘭がアンタといるのだって嫌だった!あの不吉な女の娘といたら、何があるか分かったことじゃない!!あの女は父さんを誑かしたのよ!?アンタもそうやって、私のかわいい竜胆を誑かしたの!?」
ヒステリックに叫ぶ母親。
それは言ってはならない家族の秘密。
「何やってんだよ母さん……!」
「!?竜胆…」
「大丈夫か、A─…」
Aの方へ振り向いたときだった。
心臓が止まってしまいそうだった。
一瞬だけ、息の仕方を忘れてしまった。
Aが、泣いていた。
久しぶりにみたAの泣いた顔。
そしてそのまま、Aは何も言わずに大きな音を立ててドアを閉め、土砂降りの中、どこかへ走って行ってしまった。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年10月16日 19時