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微かな潮騒、掠めて消える ページ4






「 んー、平熱だねぇ…でもこの時期に、って言うと心配だから、今日は帰りなさい 」
「 はい 」



保健室のおばあちゃん先生が優しそうな顔で私の背中を押した。授業を受けなければ、とも思ったがそこまで言われれば調子が悪い気もしてきたし、今日のところは帰ってしまおう。




「 さようなら 」
「 …あら、親の迎えは… 」
「 いりませんし、呼んでも来ません 」



強い口調になってしまったのは許してほしい。呼べば来てはくれるのだろうけれど、私が望まないだけ。だから、風邪という口実を使って、そうだ 海まで行ってみようか。







朝とは違って空いている電車にラッキー と飛び乗る。おじいさんが不思議そうにこちらをみつめるが、そんなことは今は気にしない。クラスメイトに少しだけ感謝して、隣の老人に見られないように右手首を隠した。



「 次は〜、夢ノ咲学院前、夢ノ咲学院前 」



オレンジを思い出す。海を見たら、私はどうするつもりなのだろう。家に帰ると言っても、仕事で誰もいないだろうし。しばらくは砂浜を徘徊していようか。それにしても、朝からよくあの人を思い出す。名前も性格も知らないのに、何故。



ホームに降り立つと潮の匂いが鼻を掠める。流石に海の近くは寒い。マフラーを巻き直して階段を登った。一段一段、丁寧に踏み出して、海の香りを楽しむように。













「 うわぁ、海… 」



当たり前の言葉が口から漏れるのだ。そのくらい綺麗で、青い海だった。近くで見る夢ノ咲学院は思ってたより大きくてびっくりもしたが。
駅よりも強くなる潮の匂いに笑いが。自然な笑顔を作ることができている。



鼻歌なんか歌いながら靴下、そして靴を脱ぐ。窮屈な世界から急に解き放たれた気もした、きっと気のせいである。砂に素足を降ろして踏みしめると、微かな音がする。



「 ふんふ〜ん… 」



微かな、音。静かな海だったのに、鼻歌が聞こえて。声の主を探してしまう。



「 ここを…こう!ああ、インスピレーションが!インスピレーションが止まらない! 」



探す、そんなことをする前に砂浜で服のまま寝そべっている人を見つけた。普通暑さだと思うが、寒さで頭がどうにかなってしまったのではないか と駆け寄る。



「 あの〜 」
「 やっぱり俺は天才だっ、国宝級の歌を生み出してしまった! 」
「 あの! 」
「 …ん? 」



その距離、約1メートル50センチを経て、緑色。そして、オレンジ色と目が合うのだ。




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ねむい(プロフ) - ONEさん» ひいいいそこまで言っていただけるとは本当に嬉しい限りです、、恐縮極まりないです…(?)この後も、どうぞよろしくお願い致します…! (2018年1月9日 22時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
ONE - グッスン、グッスン(泣いてる、、) だぁぁぁぁ感動したぁぁぁぁ。何!?この悲しく切ないラブストーリーは!?。泣き過ぎて鼻水がでるぅぅぅ \( ^ ○ ^ )/オワタ。 (2018年1月9日 14時) (レス) id: c55778ed91 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - 鶴永ルアさん» とても嬉しいコメントありがとうございます。頑張らせていただきます。よろしければこの後も、宜しくお願い致します! (2017年12月31日 14時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
鶴永ルア(プロフ) - 凄く感動しましたー!続きを早く読みたいです!!応援してます、更新頑張ってください(*´`) (2017年12月31日 14時) (レス) id: 51a0d5722b (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - 理音さん» ありがとうございます。細かい台詞まで、そして綺麗と言っていただき本当に嬉しいです。色々伏線立てまくってるのでよろしければこの後もよろしくお願い致します! (2017年12月30日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年12月27日 21時

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