検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:36,607 hit

15 ページ15





「 セッちゃん〜、ウロウロしてたから捕まえてきた〜 」


「 ご苦労くまくん 」


「 っせ、瀬名、これはだな、 」


言い訳しようとする彼女をくまくんが後ろから抱き締める。女の子みたいに見えて意外と力は強いから逃げられないはず。



「 来てたんだねぇ 」



「 へ、へへ… 」


顔を緩めて笑う彼女の上でくまくんの顔が揺れる。あいつ…!



「 いやぁ、チケットを貰ってな、あははは… 」


「 …気付いてた 」



彼女の手を掴むとなるくんとかさくんはそそくさと楽屋を出て行った。くまくんは満面の笑みの王さまを引きずっていく。そういうのいらないってば。



「 せ、せな、 」



「 …っもうさぁ、 」



「 へっ 」


ぎゅ と首に手をまわす。え、え、 と小さく声を上げる彼女の体を包み込んだ。



「 瀬名、ど、どうし 」


「 いいから黙って 」



冬というのは、無性に人肌が恋しくなる季節だから と言い訳をして。彼女の香りが全てを支配して離さない。




「 …聞こえてたよぉ 」


「 …っ 」



彼女の頬に触れると熱を帯びている。そういえば聖夜なんだと 初めて理解した時には熱を帯びるのはお揃い。



「 瀬名のステージ見てたら、絵早く描き上げないとって思った 」



「 … 」



「 早く描き上げて、もう瀬名に迷惑かけないから。それまで、よろしくな 」



やっぱり。
やっぱり彼女との関係は、それまでなのだろう。
居心地がよかった美術室も、あのモナ・リザも。



「 …ゆっくりでいいから、その代わり雑なもの描いたら承知しないからねぇ? 」



少し驚いた顔の彼女をもっときつく抱き締めれば痛い と声を上げた。
一瞬の温もりだけじゃなくて、この温かさがずっと続けばいい と思うのが冬なのかもしれない。




16→←14



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (94 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
126人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ねむい(プロフ) - minatoさん» そのように感じていただきとてもうれしいです;;お読みいただきありがとうございました。細かい点まで読んでいただき、嬉しい限りです。これからもどうぞよろしくお願い致します。 (2017年12月26日 14時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
minato(プロフ) - コメ失礼します。お話、すごく良かったです...!ねむいさんの表現や、情景描写がすごく綺麗でせないずの精巧な美しさというか繊細な美しさ的なもの(語彙力不足)と表現によって引き出された情景や登場人物の美しさに感動しました。一言でいうと好きです((お疲れ様でした! (2017年12月26日 14時) (レス) id: 049240713a (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - しみ猫さん» とても嬉しいコメントありがとうございます、そのように感じていただけて嬉しい限りです。お読みいただきありがとうございました! (2017年12月13日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
しみ猫(プロフ) - 感動しました、夢主の天才だけど、とても人間らしくて、読むのがとても楽しかったです、すばらしい作品をありがとうございました。 (2017年12月13日 23時) (レス) id: 48eca2380d (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» ありがとうございます〜!いえいえ、拙い文章ですが楽しんでいただけたのなら幸いです;; (2017年12月10日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年12月6日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。