愛で溢れたこの世界【逆先夏目】

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寧ろ、この答え以外思い浮かばなかったのだ。




A！と制止の声を背中に受けて走り出した。あれ、ここどこだっけ。転校してきたばかりであまりよくわからないけれど、とりあえずがむしゃらに走り出した。




彼はいるか。いるのなら、何処だろうか。




ふわりと甘い香り。目が眩みそうになるもこれはあのときの、なんて。幸い人よりも鼻がきくようで、気持ち悪いかもしれないけれど彼の香りが忘れられないのだ。



うん、確実に気持ち悪い。



…と、心の中で自分に呆れながらも走り続けること１分。確実に迷った。ここはどこだ。いや、迷っていないと思いたいけれど、運の悪いことにここって、




「 さ、三年生の廊下…？ 」




無理だ、無理。もう命はない。ただでさえ人見知りなのだから、先輩のたくさんいる階の廊下に辿り着いてしまったからにはそろそろ心臓が止まるのだろう。まだ死にたくないと思ったばかりなのに、つくづく不幸なのだ。




「 ん？おぉ、転校生！ 」
「 うわぁ！ 」



目の前に現れた人影に飛び上がる。「 俺は燃えるハートの！ 」と自己紹介をし始めた先輩。えぇ、なにこれ。若干引きながら後ずさると後ろから肩に手を添えられた。




「 おぉ〜っ、可愛い女の子だ 」



怖い。なんだこの人。顔を引き攣らせた。頬がピクピクと痙攣してこの状況のなんとも言えないヤバさというか、そんなものを物語るようだ。




「 はぁ、ただのガキでしょ、何しに来たのあんたぁ 」




怖い、怖い、怖すぎる。三年生怖すぎる。特にこの人。今すぐ逃げ出したい。若干語彙力を失いつつ「し、しつれいします！ 」と小さく叫んだ。



…きっともう、自分からこの階に足を踏み入れることはないだろう。確実に。




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慣れてしまえば大丈夫なのだが、初対面の人はどうしてもきちんと話せない。さっきだって心臓バックバクで、今ようやく逃げ出してきた。上がった息のまま走り出したので苦しいけれど。




「 いやぁもう、どこなのなつめく… 」




ふぶっ！と情けない声を出して何かに衝突した。鼻を押さえて見てみれば。




それはドアのようだった。




「 こんなところにドアなんてあった…？ 」




夢ノ咲学院不思議すぎる。





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