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私は今まで形のないものに縋り続けてきたから、いざ他のものに縋れと言われてもそれは“ もの ”ではないし、簡単に変えられるわけでもなかった。形のないものは不安定でも、信じられるのは結局は自分だけだから、信用できるのは結局は自分だけだから、そんなに揺れ動くことはない。
君への気持ちだけで頑張ってきたけれど、君への気持ちを置いてきたから、私は受験をやめた。ばいばい、って言ってしまったから、君と私は他人になった。先生にはすごく怒られたし、親にも縁を切られたけれど、私の人生だ、好きに生きさせてよ。
ずっと窮屈だったところにいて、まるでコルセットをきつく巻いていたのに急に緩められて大きく息が漏れたみたいに解放された心地だ。学校に行かなくなったら、空気がやけに澄んでいるように感じられた。
君への気持ちも窮屈だった。ぎゅうぎゅうで、縄で縛っていなければまとまらなかった。
もう、これきりにしたいよ、こんな思いは。
絡まってしまった糸を切り刻んで、君への気持ちをなかったことにする。それでもね、小さな糸屑がいっぱいで、体にもくっついて、やっぱり完全には捨てられないんだ。
ごめんね、ひとつだって素直になれなかったよ。最低って君のせいにしたけど、それは私だった。ううん、君も最低だったから、プラスマイナスゼロになんてならなくてさ、もっともっと下の、誰にも想像できなかったところだよ。
君のために何かしてあげられた?
でも君は私のこと好きでもなんでもなかったんだから、私が君のそばにいたことはきっと君のためになってなかった。つまり、根本的に間違ってたよ。ばいばいって告げるのもきっと君が適役だったよね。
君はさ、やっぱり、結局のところ、自分が大好きだったんだよ。私だってそうだった。大好きだったのは互いのことじゃなくて、大人ぶった自分たちのこと。綺麗事で自分を見えなくさせて、すべてを覆い隠して誰にも見られないようにする。まだそれが下手だったから、ボロがたくさんでてしまったけれど。
君と一緒に学校に行かないから、働くしかないね。雇ってくれるかは別として、やっぱり“ そういうこと ”するしかないのかな。
堪えるよ、必死に耐える。形のないものにでもなんでも縋って生きてみせる。だからいつか、迎えに来てね。
ばいばい、凛月。いや、朔間くん。今度こそ本当に。君を好きになって残ったのはね、虚無感じゃなくて糸切りばさみ。糸屑は、もうすでに体の至る所にくっついている。
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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね(^^)独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい!精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします! (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます(^^)推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月15日 23時