5 .笑み( 2/2 ) ページ8
白馬の王子様。
今の彼にぴったりなその光景は、
わたしの瞳を虜にした。
おとぎ話の中にでも、
迷い込んでしまったのだろうか。
そう思ってしまうほどに。
赤「 そうだA 」
『 はい ?』
赤「 ゆきまるに乗ってみるかい ?」
『 む、無理だよ。わたし、乗ったことないもん 』
赤「 練習すればすぐに乗れるようになるよ。僕が教えてあげるから 」
『 じゃ、しゃあ…お願いします 』
そっと白馬にまたがったわたしの後ろに、
彼が続けてまたがった。
教えるって、こうするの ?
戸惑っていると、後ろから彼の手が伸びてきて、
わたしの手を包んだ。
赤「 まず、馬に乗るには、この轡が1番重要なんだ。これを上手に操れるようになれば、乗馬技術はあがっていくよ。じゃあさっそく、やってみようか 」
『 わ、わかった 』
すぐ後ろに彼がいるというだけで、
かなりの緊迫感。
赤「 肩に力が入っているね。力を抜いて、リラックスだよ 」
『 う、うん 』
彼にそう言われ、肩の力をスーっと抜いて
もう一度チャレンジしてみると、
数歩ではあるが、白馬が前に進んだ。
『 で、できた !』
勢いよく振り返ったわたしに、
すごいじゃないか、と褒めてくれた彼。
それが嬉しくて、思わず頬が緩む。
赤「 はじめて見たよ、Aが笑ったところ 」
『 え ?』
そうだ、そうだった。
わたしは今まで、心から笑ったことなんて
一度となかったんだ。
生まれてから17年。
わたしははじめて、笑う幸せを知った。
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作者名:陽茉理 | 作成日時:2017年8月10日 16時