14 .はじめて ページ23
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ぼやけた視界の先に見える赤。
炎の中にでも放り込まれたのだろうか。
…いや。違う、これは。
『 ……赤司、くん ?』
赤「 A、よかった 」
ゆっくりと胸に手を当てると、
ドクン、ドクン、と心臓の音が聞こえてくる。
わたし、生きてたんだ。
『 ここはどこ ?』
赤「 学校の保健室だよ。本当は病院の方がよかったんだが、急だったからね 」
『 そうなんだ 』
はっきりではないけれど、
逃げ出したことは覚えている。
今ごろわたしを探しているのかもしれない。
『 追いかけてくるかな、あの人 』
赤「 大丈夫だよ。その件は警察に連絡してある 」
『 よかった、………あ… 』
ふと、涙が零れた。
暗い世界しか知らなくて、
同じ景色しか見ていなくて、
人の愛情を知らなくて、
涙を流す理由すらなかった。
でも、1度だけあった。
初めて彼に会ったあの日。
ドア越しに聞こえる彼の声に、
涙を流したんだった。
初めて泣いたのも、笑ったのも、
ぜんぶ、彼が教えてくれたんだ。
この素晴らしい世界のことも。
赤「 A。君と行きたい場所があるんだ。体調がよくなったら一緒に行かないかい ?」
『 うん、もちろん 』
赤司くんはわたしの頭をくしゃっと撫でて言った。
赤「 早く元気になりますように 」
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作者名:陽茉理 | 作成日時:2017年8月10日 16時