七つ子なんてなりたくなかった【おそ松さん】 (ページ2)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:2,111 hit

第二夜＿＿見つかったページ2

「ねぇ、君、誰？」

「＿＿っ」

一松兄さんの顔がすぐそこにある。
見ないでほしかった。
ばれてもいいから、せめて。

「ん？なに？この子～」

きゃるん、としたトド松兄さんの声。
声もすごく低くなってるし、
雰囲気も、容姿も、態度も＿＿

こくりと唾を飲んだ。
細くして歪められた彼の視線は、
極力私を見たくない彼の意思だと、
小さく幼い私でも時が経つにつれ
それくらいわかった。

「わ……私は……」

「君っ、可愛いね！」

十四松兄さんの甘い声。
＿＿あぁ、こんなに優しかったっけ。
すると、ドアから響くなにかを
落としたような、カッという音。
そこには、母さんが立っていた。

「か、母さん＿＿助けて、怖いっ＿＿」

何年も声を出していなかった。
声は掠れていて、音にならない。
まともに一文をしゃべったのは、
本当に久しぶり。
昔と違う声が私を震わせた。

「怖い……？なんでだいカラ松girl」

がっと後ろを振り返る。
かすれた声は虚しく響く。
睨み付けると、少し怯んだようだった。

「なに言っているの＿？
昔はあんなに馬鹿で、
おどけていたのに＿＿」

涙がふわりと溢れた。
……正確には涙なんてかれていて、
血がどろりと溢れた。

「だ、大丈夫？君…」

おそ松兄さんの声。
この声も、聞いたことがないような
声に変わっていて、
壁越しなんかじゃないって、
私に嫌でも教えてくる。
『誰か』がハンカチを私に差しのべる。

「血、ふきなよ」

ぶっきらぼうだけど、
優しい声。

「私はこんな声、知らないわ＿＿
私を蔑む、醜い声しか知らないのっ」

「＿＿なんで君を蔑むの？
可愛いし、仲良くしようぜー」

赤いパーカーはほんのりと
暖かそうで＿＿

「お願い母さん、助けてよ」

その声は声にならなかった。
ただ、虚しく空をカラ回った。

次回予告

「好きだ、A＿＿
昔は悪かった」

「こんな世界、消え去ればいいのに」

「なんで死んでくれないの！？
昔より綺麗になって＿＿
早くﾀﾋんでよ、Aちゃん！！」