僭越ながら上官様、宣戦布告させて頂きます

宣戦布告３５ ページ36

平和な日常の裏には、泥臭い《闘い》がある。





不知「囮捜査ァ？」

『そうそう』



仕事休憩中、私は不知と屋上で久々にうだうだと駄弁っていた。






話すのは今日の夜分に行われる《囮捜査》の話。






不知「へー、じゃあお前の班の上司二人と伊丙サンも参加してんのか」

『そ。格好良いよね〜…旧多さん以外』

不知「何でそこは素直になんねーんだよっ！」








今日の夜、キジマさんと旧多さん、ハイル先輩らは《ロゼ》を誘き出す為の作戦を決行する。





かなり危険な作戦の為、新人の私はやむなくお留守番。

本当は参加したかったけれど…キジマさんに「Aさんにはまだ早いですよ」と諭され、仕方無く身を引いた。









また前みたいに突っ走って皆さんに迷惑をかけるのはゴメンだ。









『もっと強くならなきゃなぁ』





天を仰ぐと同期はカカッと特徴的な笑いを零す。






不知「Aは充分強ぇだろ」






でも私は即座に否定の言葉を返した。






『まだまだ。全然だめ、オークション戦で思い知った』

不知「マジ？じゃ、あの《旧多一等にぎゃふんと言わせてやる》っつー宣言は…」

『無し！あの人意外と手強かった！』








開き直って笑うと不知も破顔する。







不知「だろーな」

『そ。ま、いずれは越すけどね』

不知「俺もそれまでにはサッサン越してぇな〜…」






二人して空を見上げれば、数時間後には上官たちが繰り広げる討伐戦とは無縁そうな晴天が広がっている。




『…無事に帰って来るよね』








思わず気弱な事を吐けば、遠慮なく頭をぶっ叩かれた。







『痛ぁぁぁ…！！！』


前頭葉を揺さぶられる衝撃に悲鳴を上げる私。

元々少なかった脳細胞が今ので３８０は減った。






不知「バカ、俺らが上官信じねぇでどうすんだ」






苦笑いした後、不知は付け加えるように呟く。






不知「万が一、なんて事にならねぇように祈っとこうぜ」






『…そうだね』









戦いは何が起こるか分からない。


《絶対》なんて事も、有り得ない。









『…』





胸中に渦巻く不安を持て余してもう一度視線を上げると、数羽の鳩が呑気なさえずりを奏でながら飛んで行くところだった。

宣戦布告３６→←宣戦布告３４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す