僭越ながら上官様、宣戦布告させて頂きます

宣戦布告２８ ページ29

旧多一等はスマホのカレンダーを開いて「ん〜」と予定をチェックしていたが、少しして申し訳なさげな顔をして液晶画面を向けて来た。



旧多「困ったなぁ、意外と予定詰まってる…この夜って空いてたり？」

『はい？』




人差し指が示したのは…待てよ。







１２月２４日の夜って、世間が言うところのクリスマス・イブじゃないか。






『空いて、ますけど…』

旧多「なら決まりですね」

『ああっ待って！！！』


私がキレの悪い返事をした途端に旧多一等は予定を入れようとし始め、慌ててストップをかける。


旧多「…何です。五月蝿いですねぇ全く…」

『いや、あの…！！』


サラッとしている旧多一等に恐怖を覚え、私は遂に《罪悪感ストッパー》を引きちぎって捲し立てた。



第一項、自分は構わないがアンタの休暇、しかもイブと被ってる休日をわざわざ割くとは何たる暴挙か。

第二項、イブとは大切な人と過ごす日であり…クソ生意気な部下と過ごす為の一日ではない。絶対に、ない。



そして肝心な第三項、その日…カップル溢れ返ってるんですよ街中に！そんな中カフェなんて男女で行ったらどういう目で見られるか！




主にこういう趣旨を感情豊かに語り尽くした私だったが、返事は一言だった。









旧多「A三等にアレコレ決める権利…ございませんよねぇ？」









『…そうでした…！』




そう。そもそもの発端は、私が犯した大失態のツケ精算。



一連の計画に際して私に拒否権なんてものは無い。







例えどんなに高級なセレブカフェ(？)に行かされても…ついでに何か他のものを奢らされる羽目に遭っても。





今回ばかりは文句一つ言えない。









『…分かりました。では２４日、でお願いします』


憤懣やる方なし、という態度を全面に出して言うと件のがめつい上官はニンマリと笑う。




そしてくるりと身を翻し、鼻歌交じりにふざけた一言。







旧多「楽しみにしてますね〜♡」






『それは、どうも…ッ！！！』




でしょうね、旧多一等にとっては聖夜にタダ飯一回分しかも忠実なお財布付きのナイトティータイムですもんねぇ！！！！



今すぐ怒号の雄叫びを上げたい衝動を押し殺し、私は足音荒くデスクに戻る。






『(…でも)』



楽しみには、してくれるんだ。





その点だけは少しだけ好印象だった。


とは言っても、まだまだ旧多一等と比べれば道ばたに生えてるタンポポとかの方が愛嬌あると思うけど。

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