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【63】 ページ17

星座にはいろいろな逸話があるという。
悲劇的な最期をむかえるものもあれば、功績を讃えられているもの、ちょっとおかしなものまで種類は様々だった。

「皆さんも、夜空を見上げてみてくださいね」という言葉で結ばれたアナウンスを最後に、虚構の夜空はすっかりと日常に戻っていく。
くあ、と横であくびをかみ殺した場地くんにつまらなかったかと問いかければ、即刻否定するようにその首が横に振られてほっとした。
次々と人が立ち上がって退室していく中、それに続くように外に出る。
改めて周りを見渡せば、カップルであろう二組ばかりで少しだけ緊張した。

「すげぇ場所だったな。なんか」
「プラネタリウム初めて?」
「おう。あんまりいかねぇだろ」

そういう私も、プラネタリウムに来たのは確か、小学生の遠足の時以来だった。
幼心に綺麗な星空に心躍ったのは覚えているけれど、それから一度も訪れないままここまで来た。
プラネタリウムという娯楽がある以上、それを趣味にして通う人がいないとは言えないが、少なくとも私にその趣味はない。
では何故、場地くんとここに来ることを選んだのかと聞かれれば、それこそ「都会の空は明るいから」という理由に他ならなかった。

場地くんのお願いを聞くために、様々な場所に行った。
他校にも行ったし、まず人生で一度も行くことはないであろう鑑別所にも行った。
夜に出歩くなんて初めてだったし、知らない学校、それも中学校に乗り込むなんて自分がするとは思っていなかった。
その帰り道に歩いた夜道は、いつだって明るくて。

この世界から光さえ消えれば、私たちの頭上にだってあんな星空が広がっているのだと知りたかった。実感したかった。
離れていても、見えなくても、変わらない空の下で繋がっていられたらと思い込みたかったのかもしれない。
良く考えれば、それすら微妙にズレているけれど。

「あーあ。オレも星座になりてぇなぁ」
「なんで?」
「カッケェだろ。アレが味方すら騙して敵をぶっ倒そうとしたバジ座、的な」
「語感がダサい」
「うるせぇ」

突然男子中学生どころか、男子小学生のようなことを言いだした場地くんに噴き出す。
幸い、まだまだ今日という時間はあった。

「ほら、馬鹿なこと言ってないで早く行こ!」
「次は旨そうな魚見に行くんだったか」
「水族館ね」
「わかった。わかったって」

勝手に考えて悲しくなるのはもうやめよう。
少なくとも今日一日は、隣に彼はいてくれるのだから。

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よぞら(プロフ) - 本当に素敵な作品をありがとうございました。もう最後の2人のデートで涙が止まらなかったですし、触れられない…体温もわからない…って切なすぎてずっと泣いてました(泣)本当に大好きです。ありがとうございます!! (2021年10月14日 1時) (レス) @page31 id: 1a17489b7d (このIDを非表示/違反報告)
仁日 - 完結前なのにもう泣いた。文章能力高過ぎです。ゴイザラス。どうしようド性癖過ぎて完結したら暫くのたうち回る未来しか見えない。大好きです。愛してます。 (2021年10月12日 8時) (レス) @page15 id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:晴海 | 作成日時:2021年10月7日 21時

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