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予定通り、シンプルな入口を抜けてチケットを買い、プラネタリウムに私たちはやってきた。
休日なのもあって人でごった返しているかと思ったが、意外とそんなこともないらしい。
まばらに人が座る会場の中、指定された座席に腰掛ける。購入したのは一席だけだったけれど、幸運なことに私の隣に誰かが座ることもなく、そのまま場地くんが腰かけた。腰掛けたというより、立っているといった方が適切かもしれない。
「首痛くないの?」
「痛いとかそういう感覚がねぇ」
幽霊になると、色々便利な体になるらしい。
そのままじっと暗い天井を見つめる場地くんと同じように、私もそのまま天井を見上げた。
薄暗かった会場から光が消え、アナウンスとともに満点の星空が広がる。
私たちが暮らす東京では、まず見られない疑似的な夜空だった。
これが何座で、この星の名前は何といって
そうして何月の空で見られるのだと、解説するアナウンスの声をぼんやりと聞き流す。
折角やってきたのだからその星空を満喫すればいいのに、なんとなくその視線は隣の場地くんに向いた。
じっと、星を見つめる横顔。
整った顔をしていると改めて思う。
その視線は一点を見つめながら、場地くんはそのまま私にぼそりと、声を潜めて話しかけた。
「もしオレがああして星になったら」
「…うん」
そっと細められた目が、迷子の子供みたいだと、思った。
「…誰か見つけてくれんのかな」
見つけるよ、とその言葉の代わりに、熱も感触もないその手に触れる。
必ず見つけるよ。
孤独になんてしない。
きっとあんたの仲間だってそう言うから。
だから、独りぼっちみたいな顔をしなくていいんだよ。
言いたい言葉は沢山溢れるのに、言葉に乗せるのが難しかった。
触れた掌はあくまで空をきり続ける。
場地くんは私の手が触れていることがわかったのか、一瞬驚いた顔してからくしゃりと、そのきれいな顔を歪ませて笑った。
「…オマエ誕生日いつ?」
「いつだったかなあ」
「覚えとけよ」
「場地くんは?」
「11月3日」
「過ぎてんじゃん」
ぼそりぼそりと、ほぼ吐息のような音で交わされる会話。
ただ手を重ねながら、私たちは虚構の夜空に見入った。
夜が明けなければいいのに。
このまま時さえ止まればいいのに。
そう願う私の気持ちとは裏腹に、場地くんが何を考えているのかは終始わからなかった。
同じ気持ちで、いてくれるだろうか。
どちらでもよかった。
ただ、彼が前を向けたらいいと、思う。
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よぞら(プロフ) - 本当に素敵な作品をありがとうございました。もう最後の2人のデートで涙が止まらなかったですし、触れられない…体温もわからない…って切なすぎてずっと泣いてました(泣)本当に大好きです。ありがとうございます!! (2021年10月14日 1時) (レス) @page31 id: 1a17489b7d (このIDを非表示/違反報告)
仁日 - 完結前なのにもう泣いた。文章能力高過ぎです。ゴイザラス。どうしようド性癖過ぎて完結したら暫くのたうち回る未来しか見えない。大好きです。愛してます。 (2021年10月12日 8時) (レス) @page15 id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:晴海 | 作成日時:2021年10月7日 21時