木製バット ページ34
あ、とデータまとめをしていたAはふと気付いた様子で席を立つ。
『ごめんちょっと室内練習場に行ってくる』
渡辺「え?けどもう23時だよ?」
『でも多分まだ残ってると思うから...春市』
渡辺「春市?」
意外な人物の登場にナベも驚いている。
『当たりは良いのに鵜久森戦ではノーヒットだったし、3番としても本人としても悔しかったと思うから』
Aは荷物を机に置いたまま食堂を出た。
練習場に入ろうとした時ちょうど落合コーチと入り口ですれ違った。
『お疲れ様です落合コーチ』
落合「お疲れ。君とも今度じっくり話をさせてもらいたいものだ」
『え?』
よくわからない言葉を残し落合コーチはいつものように気だるげに外へ出て行った。
『なんだろ』
まぁいいや、と振り返り目当ての春市に声をかけようとした。
しかし
『春市?どうかしたの?』
バットを持ったまま突っ立っている春市はいつもの明るさはなく静かに伏せていた。
『とりあえず片付けようか』
Aは出ていたボールの箱を持ち上げ道具がしまってある倉庫へ持って行こうとした。
春市「僕は...木製をやめるべきなんでしょうか」
『え?』
突然喋り出した春市。
その内容に目を丸くした。
『どういうこと?』
春市「さっき落合さんから言われたんです。僕には木製を扱えるほどの力がないから内野を打ち砕けないって。このまま木製にこだわり続けるなら試合では使わないって...」
危うくボールを落としそうになった。
"使わない"ってなんだ
『またあの人か...』
Aはため息をつくと春市の手を掴み近くのベンチに座らせた。
春市「A先輩?」
『あのさ、春市が木製バットを使い始めたきっかけって確か亮さんに追いつく為よね?』
春市「え...なんで知ってるんですか?」
『あんたが入部してきた時に亮さんから聞いたの』
春市「そうですか」
春市は少し恥じらいながらもバットを持つ手を強める。
春市「最初は兄貴に追いつく為でしたけど、今じゃもうこのバットは僕の相棒なんです」
『うん』
春市「だから、金属に変えろって言われてもそう簡単には...『変えなくていい』」
春市の言葉にAの声が重なった。
『プレーするのは選手。楽しむのも選手。他人にとやかく言われる筋合いはないのよ?自分が自信の持てるやり方でやればいい』
Aは春市の頭を撫でた。
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Sum(プロフ) - Yumiさん» ありがとうございます!これからも一ノ瀬ちゃんを応援してあげてください!笑 (2016年2月27日 16時) (レス) id: 3e3b403e1f (このIDを非表示/違反報告)
Yumi - 風邪治って良かったです(^^)一ノ瀬ちゃんめっちゃカッコイイし憧れます//// 新作も読みます!! (2016年1月13日 23時) (レス) id: eeb79fd88a (このIDを非表示/違反報告)
Sum(プロフ) - 愛梨さん» そう言っていただけて本当に嬉しいですヽ(;▽;)ノ是非これからも読んでいただけたらと思います! (2016年1月4日 23時) (レス) id: 3e3b403e1f (このIDを非表示/違反報告)
愛梨(プロフ) - 久しぶりに、占ツク見てみたら続編出てたので、一気読みしちゃいました(●´艸`●) この作品が大好きなので、続きがたのしみです!これからも、頑張って下さい*_ _)♪ (2016年1月4日 22時) (レス) id: a422c79f90 (このIDを非表示/違反報告)
Sum(プロフ) - さえ*°。・:+°さん» 毎回コメントありがとうございます!!精一杯頑張ります! (2016年1月4日 19時) (レス) id: 3e3b403e1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sum | 作成日時:2016年1月4日 15時