11.お菓子のハードル ページ11
テストまで2週間をきったというのに外で体育とはどういうことか。
教室で勉強させてくれ、と運動はからっきしの私は必死に走っていた。
50メートルハードル走。
走るのだけでも大変なのに飛ぶこともしなければならない。
そんなこともちろん私には無理なわけで。
いや、最初の方は出来ていた。最初の方は。
問題は最後のハードル。
飛べたと思っていたのに足を抜ききれずそのまま転倒したのだ。
いや、違う吹っ飛んだ。
もうそれは清々しいほどに。
なんか、あの、ものすごく凄かったらしく友人は腹を抱えて笑いながら「アクション映画の悪役も驚くほどだよ」と褒めてくれた。
実に嬉しくない。
やれやれと思いながら保健室に入る。
が、ここで予想外の人物がいた。
「ん?先生ならいないけど、どうしたの〜?」
間延びした声とめちゃくちゃ大きな体。
紫原敦だ。
「あ、えっと」
「あれ、膝擦りむいてんじゃ〜ん」
戸惑う私の全体を見渡して膝へと指をさす。
「う、うん」
「手当てしてあげる〜」
「え!?」
唐突だった。
私みたいなのミジンコぐらいとしか思ってないと考えてたから。
まず話しかけてくることが凄いのに。
しかもあの敦が誰かの傷の手当てだなんて。
我が子の成長を慈しむような母親の気持ちになる。
「…早く座りなよ」
「ご、ごめん」
何か察知したのかジト目で睨まれた。
違うよ、少し驚いただけ。
何も思ってないってば。
私の膝に消毒液を当てようとした時、妙に赤い手に違和感を覚えた。
「その手…」
「別に、家庭科で火傷しただけ」
さらりと、どうでも良さそうに答えられた。
とはいえ、火傷。
私よりもめちゃくちゃ重い怪我だ。
これだからキセキの世代は…。
「ダメじゃん!変わって!」
「え〜」
心底面倒くさそうだが当たり前。
怪我は手当しなければ。
誰かの視線を少し感じながらも私は彼の手当てに取り掛かった。
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天 - 凄く面白いです!更新頑張ってください! (2020年11月20日 16時) (レス) id: e6de3d2e77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しお | 作成日時:2020年7月5日 18時