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しかし、諦めることが出来なかった。
鴎外を見送った後、帽子を被った男を先導に、何人かが執務室の前を通った。
帽子の男は確か、中原中也、という名前だったはずだ。(中原中也という男はよく執務室に現れるため、名前は覚えていた。どういった人物なのかは全く知らないが。)
恐らく、何らかの任務をこなすため出かけるのだろう。
この男達の後ろについて行けば、外に出られると考えた。男達と距離をとり、ついて行くことにした。幸い、警備の人は居ないようだ。
Aは初めて、鴎外との約束を破った。

---

「……あつい…。」

外に出て初めての言葉だった。数年ぶりの太陽は、ジリジリと迫ってくるような、すぐそこに太陽がある感じがした。
前にいた男達と距離をあけすぎたため、どこに行ったのか分からなくなっていた。

歩き出してどれほどの時間が経っただろうか。もう既に、ポートマフィアのビルはどこにあるか分からない。
財布を持っていないため、乾いた喉を潤すことが出来ない。持っているのはハンカチと、鴎外から貰った腕時計だけ。腕時計を見ても、何時から外に出たのかすら記憶していない。ただずっと歩いているだけである。
ふと横を見ると、明るい外のはずなのに、暗い道があった。建物と建物の間にある暗い道。路地裏。外に出ないAには日差しは思ったより辛いものだったため、涼んでから帰ろうと思った。ビルから真っ直ぐ外に出たため、反対向きに進めば帰れるだろう。鴎外が帰るまでに戻ればいい。
奥へ奥へ進んでいくと、声が聞こえた。男の声だ。こんな暗い所で何を話しているのだろう。明るい所で話せばいいのに、と思いながら進んでいく。声が近くなり、そっと覗いた。何人もの男達が何かとお金を交換していた。Aはすぐに、それが麻薬の取引だと分かった。
見つかれば、命はない。
息を潜め、そっと後ろへ下がる。慎重に、慎重に。

__カラン

何かを踏んだ。足元に目を向けると、捨てられた空の缶ビールだった。

「なんだぁ?今の音」

「チッ、見つかったか?」

麻薬の取引をしていたであろう男達が、何の音かを探索しようとしている。
逃げなければ、本能がそう感じている。後ろを振り返り、一気に走れば間に合う。
くるりと振り向き、駆け出そうとすると、腹部に鈍痛がきた。あまりに一瞬の出来事に声が出ず、呼吸ができなかった。

3→←鳥籠の人形1*



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設定タグ:森鴎外 , 文スト , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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あとり(プロフ) - さらささん» ありがとうございます;;ちょっぴり苦いお話にしちゃってすみません;私の確認不足でした… あああ本当ですか!嬉しいです……!!これからも精進して参ります! (2019年12月15日 19時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
さらさ - すてきな話をありがとうございます 森さんも夢主ちゃんもお互いに想いあっているみたいだけど色んな思いが交差してもう一歩踏み出せない感じですね リアル感があってとてもいいです いやあ 作者様の文才がうらやましいです これからも無理のない様に頑張って下さい (2019年12月13日 15時) (レス) id: a0220cc930 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 白しらすさん» ありがとうございます!!とても嬉しいです…! (2019年10月26日 17時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
白しらす(プロフ) - ( ゚∀゚):∵グハッ!!かわいい...かわいいぞここの森さん!!!!!好き!!!!!! (2019年10月25日 1時) (レス) id: 71d6bb7d16 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 凛さん» ああああありがとうございます;;上手くかけてるかとても心配だったので嬉しいです;;こちらこそリクエストありがとうございました! (2019年10月18日 21時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あとり | 作成日時:2019年6月16日 23時

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