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鳥籠の人形1* ページ16

幼い頃、Aは人を殺めたことがあるらしい。
両親を目の前で殺された後、包丁で相手を刺したらしい。ポートマフィアに引き取られたのは、そのせいだという。
しかし、それが事実なのか嘘なのか、Aには分からない。
なぜなら、Aはその当時の記憶を失ってしまったからだ。当時以前のことすら思い出せない。さらに、両親の他界で少女は絶望し、感情までも失った。
お母さんとお父さんに会いたい、と寂しがることも、泣くこともない。何が起きようと動じず、ただ瞬きをするだけ。傍から見れば人形のような、気味の悪い少女だった。

Aを引き取った鴎外は、引き取った当日にこう言った。

「あのような悲しい出来事を、思い出さずにすむように、ここで私と一緒に暮らそう。」

小さなAの手を握り、優しく微笑んだ。
その言葉に、小さく頷いた。

鴎外は、様々なものをAに贈った。
美しいドレス、アクセサリー、時には宝石。ぬいぐるみ、本、など、多くのものをAに与えた。
それは十五歳になった今でも続いている。
その度に、Aは疑問を抱いていた。
感情を失った自分に、何故ここまで贈り物をしてくれるのだろうか、と。
エリスのように喜んだり、嫌がったりすることもなく、気持ちがこもっていない感謝の言葉を述べるだけの人形に。
『嬉しい』とはどういう気持ちだろうか。
『嫌だ』とはどういう気持ちだろうか。
贈り物をしてもらう度に、その想いが日に日に強くなっていく。
感情を理解したい。そのためには、自分が感情を得なければならないと考えた。
感情を得るための方法は_

「ついて行きたい?私の仕事にかい?」

「だめ、ですか」

鴎外に引き取られたあの日から、一歩も外に出ておらず、何年も太陽の光を浴びていない。そのため肌は奇妙なほど白い。
鴎外の仕事について行けば、外の世界について知ることができ、色んな人間の感情が渦巻く外でなら、理解できるようになると考えた。

「うーん…君に危険な目にあって欲しくないのだよ…だが一緒の方が捗るというか……。」

鴎外は魘されているかのように悩んでいる。その様子を、Aはただ大人しくじっと見ている。

「…いや、やはり許可は出来ないな。」

Aは表情を変えることなく、わかりましたと言った。

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設定タグ:森鴎外 , 文スト , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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あとり(プロフ) - さらささん» ありがとうございます;;ちょっぴり苦いお話にしちゃってすみません;私の確認不足でした… あああ本当ですか!嬉しいです……!!これからも精進して参ります! (2019年12月15日 19時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
さらさ - すてきな話をありがとうございます 森さんも夢主ちゃんもお互いに想いあっているみたいだけど色んな思いが交差してもう一歩踏み出せない感じですね リアル感があってとてもいいです いやあ 作者様の文才がうらやましいです これからも無理のない様に頑張って下さい (2019年12月13日 15時) (レス) id: a0220cc930 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 白しらすさん» ありがとうございます!!とても嬉しいです…! (2019年10月26日 17時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
白しらす(プロフ) - ( ゚∀゚):∵グハッ!!かわいい...かわいいぞここの森さん!!!!!好き!!!!!! (2019年10月25日 1時) (レス) id: 71d6bb7d16 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 凛さん» ああああありがとうございます;;上手くかけてるかとても心配だったので嬉しいです;;こちらこそリクエストありがとうございました! (2019年10月18日 21時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あとり | 作成日時:2019年6月16日 23時

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