誠の旗の元で。続

五拾肆 ページ5

．




部屋に戻って、着物を全て確認していた





"雪霜に ほどよく色のさきがけて 散りても後に 匂う梅が香"





これは確か、芹沢さんが、投獄されていた時




残した"辞世の句"





こんなの渡してこなくたって、周りを見ていればわかるのに





ポツポツと涙が落ちた先は





見た事のない浅葱色の着物





持ち上げて見ると、それは着物ではなく、羽織り





貴「自分で決めろって言ってたのに…決めさせる気ないでしょ」




最後まで横暴な人だ






昔から、決まっていたのかもしれない





斉「A、ちょっと良いか」





貴「…っどうぞ。」




一くんの声だとわかり、何も考えずに答えてしまった





斉「どうした。芹沢さんになにかされたか」





一くんらしくのない、焦りの声が聞こえた




貴「違う…けど……」




斉「…その羽織りは？」




貴「これは…芹沢さんに」




斉「…向こうも覚悟している。ということだな」




貴「うん」





斉「Aも、」





付け足すように私の名前を口にした




貴「まだ、みんなには内緒」




斉「…わかった」





貴「どうして、部屋に？仕事の話？」




斉「いや、今日はただ、芹沢さんになにかされたのではないかと…」




心配してくれていたみたい





貴「ありがとう。今日は、大丈夫だよ」




斉「良かった」




少しだけ笑みをみせ、帰って行った




今日は芹沢さんの新しい一面もみれて




一くんが仕事の話以外で私のところに来てくれて




素敵な日だった





芹沢さんとの時間も、大事にしないと…

五拾伍→←五拾参

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す