その三人、救済 【あんスタ】

キメラ ページ20

「始める前に…。お前ら、退けろ」








しっしっ、と手を振り舞台袖へと追い出す。呆然としている『Trickster』の腕を引っ張りながら二人は下がっていった。




それに満足そうな顔をして目を伏せる。歌詞をサラッと思い出しながら指を鳴らした。









「…♪〜♪〜♪〜〜〜♪」








横を見るついでに二人を見れば、バタバタとしながらメイクの下準備をしている。…頑張れよ。




その想いが伝わったのか二人の雰囲気が柔らかくなった気がした。それについ笑みがこぼれそうになるが、どうせなら、と余裕綽々の腹立つ顔をやってやる。会場がどっと湧いた。









「〜〜〜〜♪〜〜♪」








本当の『三大華』のライブだったらこんな顔しないもんね…。と、若干心の中で白目を向きながら曲を歌い続ける。




一旦止まってしまったら、もうこの曲は潰れてしまうからね。そうならないよう、一つ一つの音を丁寧に歌い上げる。




…あ、ハイライトは前回と反転してるよ。だからデフォがハイライト入り。久しぶりに目に光が入ってるから眩しいったらありゃしないぜ。










「〜〜〜♪〜〜♪」









やっとサビだ。虹歩は…準備できてるね。あと二分くらいで全てが終わると思いつつ、気が抜けない時間になってきた。この曲、気を抜いたら最後だからなー。




動きの少ないこの曲はとても単純なダンスではある。でも、そんな曲だからこそ、その人のダンスの技量や歌唱力等がわかるってことさ。




だからこそ、普通の曲以上に不安になるし、指先や止める角度をいつもよりしっかりとやらなければ、点数が入らないってこと。




つまり、気を抜いたら誰も見てくれなくなる曲になるんだ。いやー、難しい曲だね！










「〜〜♪！」









よっし、1番終了。…やっと、虹歩(私)の登場だ。

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