本当の伝説、その名は_______ (ページ5)

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早乙女律の話ページ5

これは、ある舞台の取材中のこと。

「僕より美しいもの？存在しないに決まってるじゃないか。」
「僕と並ぶ月皇遥斗という存在はいるが…」
「いや、一人だけ思い当たったが…彼は美しいという次元に閉じ込められることを望まないからね。」

最初は嫉妬だった。
美しい遥斗といつのまにか共に行動するようになって、誰も見たことがない笑顔を彼の前では見せる。それが悔しかった。僕は同じ学科でありながら話しかけることすらままならないというのに！
単刀直入に言おう。我慢の限界だったのだ。
ある日、思い切って遥斗に何故"普通科の彼"と共にいるのか聞いてみた。
すると遥斗は、誰も見たことがない笑顔で「放課後、こっそり中庭を覗いてみれば分かるんじゃないかな？」と言った。
そして、興味が湧いた。
あの月皇遥斗にそこまで言わせるとは、どんな人物なのか。そこで、中学に入ってから友人となったクラスメイトの双葉大我とともにその言葉に従った。あちらからは死角だっただろうが、魚住も何故かいた。
息を潜めて中庭を見ると、そこに居たのは遥斗と白銀の髪の男子だった。彼らがやろうとしていることはすぐにわかった。だから、心構えだって出来ていたはずだ。
しかし、その意気はいとも簡単に崩されてしまった。2人とも、レベルが違いすぎる。とても中学生だとは思えなかった。アレクシスは白銀の彼が演じているのではない。生きているアレクシスがそこにいるのだと感じる。それに引っ張られていくように、遥斗のランバートも段々と演技から生命に変わっていった。
『こっそり中庭をのぞいてみればわかるんじゃないかな？』
この言葉の意味をようやく理解できた。
事前に調べさせてもらったが、彼は音楽の勉強は授業でしかしたことがない。つまり、"鬼才"というやつだ。僕は、基本的に人に対して見惚れることはない。だが、今僕は彼の歌に、ダンスに、空気に、見惚れている。瞬時に彼が僕よりも格上だと悟った。
そして、僕も彼と同じ舞台に立ちたくなった。
大我「すっごいねぇ…あの子。俺もあの2人と同じ舞台に立ちたいなぁ…。りっちゃん？」
律「…《鳳湊》。僕たちの世代の頂点に立つのは、彼かもしれないね…。」
大我「！そうだね…今度、湊くんと話してみない？」
律「当然だろう。その時は一緒に行こう。」
大我「うん！あ！そろそろ帰ろう。2人…いや3人に見つかる前に！」
律「大我も気づいてたのか。そうだね。」

あの日のことを僕は今も忘れない。出会いと別れの日を…。