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「あっづ…」
喉が悲鳴を上げ、じりじりと己の体力を削る太陽。のび太は垂れてきた汗を拭いとり空を見上げた。空には線を引くように飛行機雲があった。
庭の半分はまるで髪の毛がなくなったように、地面が姿を現していた。嘆息を吐く。塀の上を呆気に歩いている猫を一瞥し腰を反対方向へと曲げた。
「ごめんねぇ、のびちゃん。やって貰っちゃって」
「別にいいよ。俺も宿題終わったとこだし」
閉まっていた窓が開いた。のび太の母親である玉子の手には水滴が付いているコップ。氷が回り音を響かせた。
「お疲れ様。熱中症になったら大変だし、麦茶」
「ああ。ありがとう母さん」
部屋の中には山積みになっている洗濯物。他にも、庭には洗濯物が乾かせている所だ。のび太は縁側に腰を下ろし、麦茶を喉に通した。
「昔ののびちゃんだったら絶対にありえない事なのにねぇ」
「はは、辞めてくれよ母さん。あの頃は反抗期だったんだよ。あんまりいい思い出がない」
「それもそうねぇ。いっつも泣いてたものね」
玉子はのび太の隣に腰を下ろす。お互いに何も喋らずに、空を見上げた。二人だけの親子の空間に妙にくすぐったくなる。ふふと玉子は笑みを零した。「…そうだな。俺はいつも泣いてたな」少しずつ動く雲を眺め、静かにぼやいた。
「…それで、俺はいつも助けを求めてた。泣き叫びながら」
「…え?そんなことあったかしら」
ふと口から無意識に出てきた言葉に自分自身でも疑問に思った。玉子は“三人”しかいない家に誰に助けを求めていたのかと疑問が浮かんだ。
いったい俺は誰に助けを求めた?ジャイアン?スネ夫?違う。その二人ではない。しずかちゃんでもないし出木杉でもない。じゃあ誰だ?頭の奥底に厳重な扉があっていくらノックをしようとしても扉は開かない。更には霧がかかり始めた。
「…じゃあもうそろそろやるよ」
「ありがとう。お願いね」
のび太は考えを振り切るように、静かに言った。玉子は立ち上がり部屋へと戻っていく。手の中にあった麦茶はもう生温くなっており、こんな真夏に飲めるものではなかった。「よいしょ…っと」コップを隣に置き、足に力を入れて立ち上がった。ふと立ち眩みがしてバランスが崩れる。
「いっ…!」
足がもつれ勢いよく倉庫に体当たりした。一際大きな音を立ててのび太は地面に崩れ落ちる。反動で倉庫はいとも簡単に開いた。
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レイあむ(プロフ) - めっっっっちゃ気になります (2023年3月8日 10時) (レス) @page3 id: 540a228251 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 続きが読みたいです! (2020年1月7日 23時) (携帯から) (レス) id: d7f028195c (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年12月25日 18時