姉妹 ページ5
・
斎場では、障子の向こうで通夜振る舞
いが行われていた。
連絡を受けて遠方から集まった、数少
ない親戚がヒソヒソ話す声が障子の向こ
うから聞こえてくる。
家が借家で良かっただとか、法定代理
人はどうするかとか……子供の私たちに
はわからない話ばかりだった。
ああ、この人達は、私のお父さんとお
母さんの死を悼むよりも、これから自分
たちに降りかかる様々な手続きや、厄介
事の方が重要なんだと、その時何となく
わかったんだ。
そして、この可哀想な姉妹を一体誰が
引き取るか――押し付け合う親族。
そりゃそうだ……一人っ子同士だった
両親に遠い親戚はいたが、日ごろから全
く親戚づきあいもしていなく
父は脱サラ後、安曇野に移り住んできた
から近くに住む親戚もいなかった。
そんなわけで、親戚たちもいきなり現
れた私たちに愛情なんてあるわけがない。
”そんなこと言ったって……うちは子供
がまだ小さくて手がかかるのよっ”
”お姉さん、うちには受験生がいて、今
はどうしても無理なんですよ”
”うちだって、親の介護で手一杯だから
難しいわ”
聞こえてくる婉曲な拒絶に、私は妹の
手を握りしめ、ただ立ち尽くすことしか
できないでいた。
”あたし……ママとパパに会いたい”
涙目で私を見上げるヒヨリの手をきつ
く握りしめた。
”ママたちにはもう会えないの”
”やだっ！”
”わからないこと言わないで！パパとマ
マはもう死んじゃったんだから！”
”ふぇっ……”
みるみるうちに、妹の大きな瞳からは
大粒の涙が零れ、感情のままにイライラ
して、つい声を荒げてしまったことをす
ぐに後悔した。
”ごめん………ヒヨリちゃん、もう泣か
ないの”
”ぐすっ、ふえっ……ん……ママぁ”
”ママはいないけど、あたしがいるよ”
”ふぇっ……”
”これからは、あたしがヒヨリちゃんの
お姉ちゃんとママだよ。大丈夫、私が
ずっと一緒にいるから”
ヒヨリは大きい瞳で私を見つめると、
手で涙を拭い、小さくコクリと頷いた。
私だって泣きたかった。けれど、６歳
も年の離れた妹の前で泣くなんて……
これからは私が幼い妹を守っていかな
くちゃならないのに。
不安と哀しみで心は悲鳴をあげていた
けれど、私に縋って泣く妹を抱きしめ、
その小さい背中を擦ってやった。
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siori(プロフ) - れいさん» れいさん、初めまして。フラグの部屋は、R18指定があるので設定が必要な為コミュに登録していないと見られないのです。サイトのルールなので申し訳ないのですが年齢が大丈夫であれば登録すれば読むことは出来ます……。 (2019年9月22日 21時) (
レス) id: 25b2988e99 (このIDを非表示/違反報告)
れい - ※の続きが読みたいです。もし宜しければ見方を教えていただきたいです (2019年9月22日 11時) (レス) id: 1d3b0a592d (このIDを非表示/違反報告)
永瀬なつ(プロフ) - ※の続きの見た方が知りたいです(´･ｪ･`) (2018年12月25日 22時) (レス) id: 579642299a (このIDを非表示/違反報告)
キラみつ(プロフ) - ※の続きの見方教えて頂きたいです！！ (2018年10月18日 19時) (レス) id: 4ba300fb0f (このIDを非表示/違反報告)
m228evanescent8(プロフ) - とても引き込まれる内容で楽しく読ませて頂いてます。※の続きの見方おしえてください！ (2018年10月18日 9時) (レス) id: 834a07e579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：siori
| 作成日時：2018年8月17日 12時
