罪で結ぶ絆

郷愁 ページ6

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両親の死因は、一酸化炭素中毒だった。


　うちは冬になると昔ながらの石油スト
ーブを使用していたが、窓際に寄せ過ぎ
ていたために、カーテンへと燃え広がっ
たらしい

　病院では、火事の事を警察や消防の人
から訊かれたけれど、記憶を手繰り寄せ
てみても、どうしても思い出すことが出
来なかったんだ……。






*





　私たちを引き取ってくれたのは、父親
の従兄夫婦だった。彼らには子供がなく
東京の下町で小料理屋を営んでいた。

　彼らは私たちを引き受けることになっ
た時、まるで苦虫を噛み潰したような顔
をしたっけ……








　私たち姉妹が住み慣れた安曇野を去り
東京に引っ越したのは、火事が起きた日
から一週間程後だったと記憶している。



そしてあの日から――

私たちの生活全てが一変してしまった。



”きっとあまりにもショックだったから
　記憶がないのは心の防衛本能なんじゃ
　ないの？でもその方が幸せよ”



幸せ？

幸せなわけないじゃない……



　火事の事や、あの家で暮らしていた頃
の記憶が欠けていることについて

　何もわかっていないのに、まるでわか
ったようなことを言う、この軽薄で無神
経な親戚が大嫌いだったが、他に行くと
ころもなく

　結局、私たち姉妹は、私が高校を卒業
するまで、この親戚の家に世話になるし
かなかったんだ。

　頭の中で彼女に何度悪態をついたかし
れない。歓迎されていないのはわかって
いたから、家の手伝いは何だってした。

　お世話になっている彼らのご機嫌を損
ねないように、いつの間にか私には愛想
笑いが張り付いて、うまく笑えなくなっ
た……。





帰りたかった。

東京は窮屈でたまらなかった。

美しい北アルプスと澄んだ清流。

懐かしい学校の友達……





そしてあの瑞々しいブナの原生林。



　お母さんが焼いたバタークッキーが食
べたかったし、お父さんの工房の木の香
りが懐かしかった。



何でっ、どうして死んじゃったの！？



　妹が寝てしまってから、布団に顔を埋
め、私はいつも泣いていた。






　両親が残した貯金がいくらかはあると
言われたが、きっと大した額じゃなかっ
たんだと思う。

　まだ小さい妹は、おばさんの機嫌を気
にしておかわりを我慢するようになった。


”あの、おかわり……”

”もうご飯はないよ”

”はい……”



　きつい口調で言われ、しょんぼりと箸
を置く妹。




　



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