ＪＥＷＥＬ

ある日曜日 ページ35

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――そんなある日曜日の夕方。



　駅前のコンビニに行く途中、近所を散
歩していると”ホルモン北山”に灯が灯っ
ていることに気づいた。


あれ？

今日は市場が休みだから閉店だよね…？


　近づいてみても、いつもの赤い暖簾は
かかっていない。北山さんいるのかな？

　そっと引き戸を開けると、それはする
りと動いた。






「こんばんは……」



　少しだけ開けて中を覗いてみれば、見
たことがないエプロン姿の背の高い男性
がカウンターの中で包丁を握っている。

　眉間に皺を寄せ、真剣に料理をしてい
るようだったけれど、私に気が付きこち
らを見た。


えっ、どうしよ……






「はい？今日はお店休みですよ」



「すみませんっあの……北山さんは？」

「お知り合いですか？北山さんは今ちょ
　っと出てますよ、すぐに戻りますから
　中で待ってます？」


「え……？いいんですか？」

「どうぞ」


　彼はにこりともせずに一言そう言うと
また何かをやり始めた。



し〜ん……




トン、トン、トン

店の中に、包丁の音だけが聞こえてくる。

手持無沙汰だなぁ……





「あの、わたしやっぱり……」


　初対面の人と二人きりの店内、居心地
が悪くて、やっぱり帰ろうと声をかけた
時だった。



「遅くなっちった、よこーさんわりぃ」

「渉くん、私も来ちゃった！」

「よこーさんの料理が食いたいんだと」



　ドアが開き、北山さんと一緒に以前店
に来た女性が入ってきた。確か名前は美
咲ちゃんだっけ……。







「あれ？どした？」



北山さんは私に気づくと笑顔になった。



「え……と、近所まで来たら灯がついて
　るのが見えたから」

「今日は定休日なんだけど、彼に新しい
　料理を考えてもらってんの」

「え？料理人なんですか？」

「俺？俺は北山さんの元同僚って言えば
　いいのかな……」

「あー、よこーさんは俺がリーマンやっ
　てたときの同期。料理が得意で、いつ
　もこの店の一品料理を考えてくれてん
　のよ」



　北山さんが答えると、美咲ちゃんが口
を挟んだ。



「宏くん、誰？」

「あ、この人は佐倉Aちゃん、俺のお
　客さんでお隣さん」



北山さんが紹介してくれた。



「お隣さん？」

「マンションの部屋が隣だってこと」

「え……、そうなんだ」




　この前のスーツ姿とは違い、長い髪を
巻きパステルカラーのワンピースを着た
小柄な彼女は、花のように可憐だった。






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