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3.利用価値 ページ4

部屋を出てからしばらく歩き、人がなかなか来ない場所までやって来て腰をおろした。目の前には色とりどりのうつくしい花が広がっているけれど、それを楽しめるような余裕はなかった。

「疲れたぁ……」

ふう、とひとつため息が漏れてしまう。

───私は、兄のうしろにずっと控えている彼ら(組織の人間)が苦手だ。あの不気味な姿も、兄を『マギ』としか見ていないところも、いつ私を殺すかわからないところも、全部。

私は、マギじゃない。兄が『マギ』であることと、私自身の魔力量が多かったことから、運良く生かされてきただけで───利用価値を、見出だされただけで。
ちょっとでも反抗的な態度を見せれば、きっとすぐに殺されてしまう。

物心ついてから今まで、常に死は私の隣にあった。

だから、やっぱり彼らには慣れない。できるだけ近づきたくない。あにさまを監視している以上、それは難しいことなのだろうけど。

またひとつため息をついて、ぐっと伸びをした。しばらくぼおっとしていたからか、気持ちにも随分余裕ができたように思う。花もさっきよりうつくしく私の瞳にうつっていた。
あんまりここでぐだぐだしていても時間がもったいないし、せっかくだからもう少し奥まで歩いて行こうと、花畑のさらに向こうへ足をのばした。

ずんずんと花畑を突き進んでいくと、少し離れたところに、橋がかかっているのを見つけた。

──ああ、ここは確か。むかしに、白雄さま方に出会った、最初の場所だったような。
……蘇ってくるのは、まだ幼かったころのこと。神官として、蝶よ花よと育てられるあにさまのおまけとして、いつかあにさまに仕えるために教育されていた、昔の記憶。あちこち歩き回るあにさまに置いていかれないように一生懸命ついて行ったはずなのに、気づけば迷子になっていたとき、ひとりで泣いていたわたしをひろって抱いた、あのきょうだいのこと。

4.昔のはなし→←2.きょうだい



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作者名:織叶 | 作成日時:2019年1月13日 2時

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