24 隣に居る貴方。 ページ25
side.S
「やだね、この時期は雨ばっかりで」
俺の気持ちを先に言葉にしてしまうのは智くんの性分なのだろうか。
それとも俺に言わせたくない、か。
「梅雨なんだから雨が降らない方がおかしいんだけどね」
そうは言っても、やっぱり雨は好きにはなれそうにもない。
だって、こうして智くんと並んで庭を見ているだけで身体がおかしくなる。
不自然な程、震え始める。
それが自分自身でも理解出来るから尚のこと申し訳なくて、でもそんな遠慮よりも怖いんだ。
でもそんな俺に両手を広げて待っていてくれるのは智くんだ。
「おいで」
その一言で、包まれる温もりで、何もかもがどうでも良くなる。
「智くん」
震える身体も徐々に落ち着きを取り戻し、目の前に居る智くんを見上げる。
「大丈夫。おいらがずっとそばに居るでしょ？」
「…うん」
そうは言っても俺がそうさせているんじゃないかと、考えないことも無い。
でも、きっと智くんにこの事を伝えても、そんな事は無いと、その一言で片付けられるだろう。
それに俺自身も智くんから離れるなんて、出来たことじゃないだろう。
智くんの役に立つことも出来ずに、ただ好きだという想いと迷惑しか掛けられない俺は…
智くんのこの温もりを受けていてもいいのだろうか。
「翔くん？」
大好きな人に呼ばれる自分の名前が…こんなにも心地よい。
「なに？」
「大好きだよ」
正面からド直球でこんな事を言う貴方も俺の中ではずっと変わらない人だ。
「どうかした？」
そう聞けば暫くじっと俺の目を見つめてふわりと笑う。
「ねぇ智く…」
話の途中でもお構いないしに唇を押し当てられる。
でも抵抗する気もなくて、ただそれが嬉しくて。
「智くん、、」
「ずっーと翔くんの隣に居るよ」
そう言って今度は強く抱き締められる。
さっきは温かさが感じられたのに、今は力強く抱き締められるこの体勢すら惚れていた。
「今年は大学も卒業したんだし、二人で旅行でも行くか」
「雅紀たちも連れってあげないと…」
「それはそれ。おいらは翔くんと二人っきりがいいんだけど？」
「翔くんはおいらと二人で出掛けるの嫌？」
この人は俺にとっても雅紀たちにとっても偉大な先輩で、逆らうことなんか初めから出来ないと分かっているのに。
「ううん、嫌じゃない。」
「智くんと居れるならどこでもいいよ」
貴方を縛っていると分かっていながら離せない俺は卑怯で臆病者だ。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年5月19日 21時
