25 叶えたい夢は。 ページ26
side.A
「相葉さん」
いつもの田んぼは雨で濡れており、座れるはずもなく俺たちの溜まり場は一夜にして雨の物となった。
そんなこんなで俺とニノはキャンパス内のカフェで一息つく。
いつもはあんな所に居るもんだから、どうもこういう所は落ち着かない。
「で、どうかした?」
先程いきなりニノからメールが入って話したいことがある、とだけ連絡がきた。
「プロ入りの話があるって…」
「え?」
何でニノが知っているのか、頭の悪い俺には勘が働くなんて事もなくて。
ただ戸惑ってばかりだった。
「どうして、そのこと…」
「俺達には何も言わないつもりだったんですか?」
何も言わない俺を見て肯定ととったのだろう。
一気に目つきが変わる。
俺はこの目を知っている。
心理学を勉強しだした頃から余り見なくなった。
でも、それは抑えているからであって本来はずっとニノの根底にある思いのはずだ。
「気持ちは分かります。でも相談だけでも、話だけでもして欲しかったって、そう思ってます」
そういう所は昔から変わらない。
誰よりも人の心に敏感で、冷静に客観的に物事を見極めることに長けていた。
だから、俺の気持ちも何も言わずとも理解しその上で話してくれる。
後輩なのに、昔から頭が上がらなくて。
俺が最も信頼している奴だ。
「俺は相葉さんが決めた事に文句もケチも付けるつもりはありません。でも、翔ちゃんにはちゃんと話して下さい」
テーブルに頭が付くんじゃないかってぐらい思いっきり頭を下げる。
「絶対になかったことにはしないで下さい。貴方も知っているでしょ?翔ちゃんがどれだけ相葉さんのこと、応援しているか」
知ってる。分かってる。
だからこそ迷っているんだ。
「翔ちゃんにはちゃんと話す。プロ入りの話は断るって」
文句もケチも付けない。
ニノはそう言っていたけど、俺が断ると言った時、悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「そう…ですか」
「翔ちゃんが納得するような理由も考えるから」
気付いていても、俺が答えを変えることはない。
俺には叶えたい夢がある。
それは……
ずっとこの家に住んで、この五人で暮らすこと。
___間違っても、プロにはならない。
「相葉さんが決めた事に付いていくって決めましたから。俺は貴方のこと、ずっと見てきましたから」
「ありがとう、ニノ」
俺は優しさという自己満足に逃げた。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未翔 | 作成日時:2019年5月19日 21時