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「教えてくれるかな？何を思い出したのか」
「あ、あの……」
赤羽は口を開くが、舌がうまく動かないのか、言葉が出てこなかった。
「焦らなくていいよ、自分のペースで話して」
二宮は赤羽の肩に手を触れる。
「暗い部屋……薄暗い部屋に私はいました……」
震える声で赤羽が話しはじめる。
「そこには一人でいたのかな？」
「いえ、男がいました、3人ぐらいの男が……」
赤羽は首を左右に振る。
「その男たちに、暴力とか振るわれた？」
二宮が肩に手を添えながら訊くと、赤羽ら再び首を左右に振る。
「いえ、ただ……監視されていました。私が……作るのを」
赤羽の呼吸が再び荒くなる。
「大丈夫、もう大丈夫だよ。
君はその部屋で何を作っていたの？」
「私は……4つの……」
虚ろな目でつぶやいた赤羽は、はっと顔を上げる。
「時間！いまは何時ですか？！」
「え、零時32分ですけど……」
奈美が腕時計で時間を確認すると、赤羽の表情がぐにゃりと歪んだ。
「そんな！だめ……間に合わなかった……」
「間に合わなかった？何が間に合わなかったの？」
二宮の質問に、赤羽はあごを反らしたまま口を開く。
「爆弾……私が作った爆弾が爆発する……」
「爆弾？」
二宮が訝しげにつぶやくと同時に、赤羽は崩れ落ちた。
二宮が慌ててその体を支える。
「……気を失っている。
精神的なショックで失神したんだと思う」
「この人、間違いなく爆弾って言ってたよね。
自分で作った爆弾って」
近づいた雅紀が、
目を閉じている赤羽の顔を覗き込む。
「記憶が混濁しているから、あまり意味はないのかもしれないよ」
「……いや、違うな」
唐突に、タブレットPCを弄っていた松本がつぶやいた。
「違うってどういうことですか？」
二宮が振り替えると、松本はタブレットPCを掲げる。
そこには、テレビのニュース番組が映し出されていた。
画面を見た櫻井は大きく息を呑む。
マイクを持つレポーターの背後、そこには最上階からオレンジ色の炎と黒い煙が噴き上げているビルが見えた。
「……さっきから、ほとんどの局で速報が流れている」
松本はボリュームを上げる。
『零時ちょうど、茅場町のオフィス街で大規模な爆発があり、現在消防隊が消化に当たっています。目撃者の話によると、突然ビルの最上階で爆発が起きたということです。情報によると、負傷者も出ているということで……』
興奮したレポーターの声が、バーの空気を不穏に揺らした。
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年11月9日 16時
