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「知っているみたいですね。それじゃあ
その名前を教えてもらおうかな」

「そんなの教えるわけ……」

「犯人の名前の最初の文字は、五十音の
どの行かな?あ、か、さ、た、……」

再び人差し指で浅井を黙らせた二宮は
ゆっくりと喋っていく。

「……なるほど、『は』行ね。それじゃあ
犯人の名字の最初の文字はなにかな?
は、ひ、ふ……。ああ、『ふ』だね」

満足げに頷く二宮の前で、
浅井は大きく息を呑んだ。

「次の文字はなにかな。『ふ』で名字の
最初につくっていったら、……『藤』とか
かな。おっ正解か。藤井?んーちがうか。
それじゃあ藤木とか?これも違うと……」

二宮は浅井の顔を凝視しながら、最初に
『藤』がつく名字を次々と口にしていく。

「藤原?おっ、藤原だね。
藤原っていう男が犯人みたいですよ」

二宮は軽い口調で大野に言った。
浅井は唖然と口を開く。

「下の名前は知っているか?」

大野が問いかけると、浅井はぷるぷると
首を振った。

「下の名前を知らないっていうのは
本当みたい」

二宮は浅井の顔から
視線を外すことなく言う。

「そうか。それじゃあ、今度はそいつの
居場所を23区を順番に聞いていって……」

大野がそうつぶやいた時、松本が
ゆっくりと立ち上がった。

「……そんな面倒なことしなくていい。
もっと簡単に口を割らせられる」

独り言のような口調で松本は
ぼそぼそと言う。

大野は「じゃあ、やってみてくれ」とばかり
に目配せをした。

松本は深いため息をつきながら、浅井の
座っている椅子のわきに立つ。

浅井は怯えた表情で松本を見上げた。

「な、なんだよ、あんたら。警察なのか?
この前からしつこく、雄太のことを
訊きにきていた刑事の仲間か?」

「警察がこんなことするわけない。
……そんなことより、とりあえずその藤原
っていう男について、知っていることを
全部話せ」

松本は疲労の滲む口調で話し始めた。

「そんなこと出来るわけないだろ。俺が
チクったってバレたら、雄太と同じ目に
あうかもしれないんだぞ!」

浅井は嚙みつくように叫ぶ。

「……言わないと、警察にお前からの
情報として『藤原っていう男が川奈雄太を
殺した可能性が高い』って伝える。
そうしたら警察は、必死になってその
『藤原』って男を捜す。もちろん、お前が
密告したっていう噂が『藤原』の耳に入る
可能性は高い」

松本は淡々と語る。

浅井の表情が炎に炙られた蠟のように、
ぐにゃりと歪んだ。

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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます!ここから更に急展開ですのでお見逃し無く!! (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます! (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開!!ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています! (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未翔 | 作成日時:2021年5月15日 12時

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