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「そのかわり、『藤原』について教えて
くれれば警察に伝えない。君が密告したって
バレることもない。……どっちが得か、
よく考えるんだな」

松本は長い前髪の間から、浅井を真っ直ぐに
見つめた。

浅井は泣いているような、それでいて
笑っているような表情を浮かべたまま
硬直する。

かわいそうに。

雅紀さんの色気に騙されたばっかりに、
こんな悲惨な目に遭うとは。

浅井の痛々しい姿を眺めながら、
櫻井は内心で同情する。

「本当に……。本当に俺がチクったって
ことはバレないんだな?!」

たっぷり3分ほど逡巡したあと、
浅井はおずおずとつぶやいた。

「ああ、それは約束するよ」

大野は鷹揚に頷いた。

松本は、自分の役目は終わったとばかりに
部屋の隅に移動すると、再び椅子に腰掛け
雑誌に視線を落としはじめる。

「いったい何が聞きたいんだよ!」

浅井がヒステリックにかぶりを振った。

「それじゃあまず、川奈雄太が殺された
理由に心当たりはあるかな?」

「……金だよ。雄太は借金があったんだ」

浅井はふて腐れたような態度で答える。

「その藤原って男が高利貸しで、川奈雄太が
借金を返せないから殺したってことかな?」

「違うよ、そうじゃねえ」

浅井はがりがりと頭を搔く。

「確かに雄太は色々と、かなりやばいところ
から金を借りていたよ。けれど、そいつらは
追い込みはかけても殺したりはしねえよ。
殺したって、あいつらには一銭も得に
ならないだろ」

「高利貸しじゃないとしたら、その藤原は
どういう男なんだ?」

大野の声が低くなる。

浅井は数秒躊躇したあと、
おずおずと口を開いた。

「……カジノのオーナーだよ。
もちろん違法のな」

「ああ、川奈雄太はギャンブル好きだ
って話だったね」

大野が頷く。

「『好き』なんてもんじゃねえ。完全に
病気だったよ。最初の頃はパチンコとか
競馬やるぐらいだったのに、そのうち表の
ギャンブルじゃ満足しなくなっていったん
だよ。藤原のところだけはやばいって
何度も言ったのに……」

浅井は悔しげに唇を噛む。

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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます!ここから更に急展開ですのでお見逃し無く!! (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます! (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開!!ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています! (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未翔 | 作成日時:2021年5月15日 12時

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