失恋日記【AS】 (ページ14)

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2人で決めた行先は温泉だった。

体を張るのは嫌だし絶叫系は
お互い以ての外。

彼のことなら分かる。

好きなものも嫌いなことも
望んでいるであろう答えも。

だから行先に温泉を提案したのは俺。

「温泉とかどう？」

「いいじゃないですか、
我々ももう若くないんだから」

「まぁ初企画だし」

担当ディレクターは「初企画だからこそもっと華やかな方が…」と言ってたけど押しに負ける俺らじゃない。

「行先は任せるって言ってたじゃない」
「そーだそーだ」

という１ラリーで温泉に決定した。

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「明日なんでしょ？
朝も早いんだし飲み過ぎないでよ」

「だいじょうぶ。わかってるから」

「翔ちゃんの大丈夫は当てになんないの」

ロケの前日。

いつものように俺の家で
相葉くんと飲んでいた。

いつもいつも俺に付き合ってくれる
優しい人はあまり酔っぱらわなくなった。

昔はコンサートの後の打ち上げで
誰よりも早くぶっ潰れてたのに。

きっと俺のせいだな。

「翔ちゃん」

「ん？」

「無理だと思ったら電話してきて。
いつでも１コールで出るからさ、俺」

力強い意志。それに劣らない温かさ。

でも、いつまでも相葉くんに
甘えているばかりじゃだめだ。

いつまでも俺の横にいたらだめだ。

「ありがと。でももう大丈夫だよ」

「そっか。でもいつでもいいから。
時間なんか気にしなくていいから」

最後まで優しい言葉を掛け続けてくれた。

そんな彼に俺は何を返せるのだろう。

・

そして、朝を迎えた。

「しょーちゃん、髭剃りどこなおしたの？」
「え？いつものとこにない？」
「ないないー……あ、あった」

「相葉くん今日もロケだっけ？」
「そー翔ちゃんは荷物持った？」
「持った持った。じゃあ、」
「うん、気を付けて」

各々の移動車に乗り込む。

そんな当たり前のことすら
少し寂しく思える。

それが彼の存在の大きさで温かさ。

大丈夫。きっと何事もなく終わる。

そして、俺は相葉くんのところに帰ってくるんだ。

彼が乗っているバン。

外からじゃ彼の姿は見えなくて。

寂しさを紛らわせるように新聞を広げた。

「寂しいですか？」

「は？」

「最近、現場に行くのも相葉さんと同じだったから。それに相葉さんと居る時の櫻井さんとっても楽しそうなので」

そっか。
俺は相葉くんと居ると楽しいんだ。

思えばいつだって笑っていた。
彼のお陰で。

壊れかけてた俺の心にもう一度、灯を灯してくれたんだ。