34話 ページ37
腕の中で泣きじゃくるAを見て、僕は思いに耽っていた。彼女の事と、Aに想いを寄せる、納棺師の彼の事。
先程のゲームで、軟弱そうな彼を失血死寸前まで置いてから飛ばしたのは失敗だったか。
僕が彼に、Aと2人きりになれる機会を与えてしまったようなものだ。
あの医務室で何が起きたのかは知らないが、Aの状態や”匂い”で概ね予想がつく。
Aの体からほのかに漂ってくる、納棺師がいつも身にまとっている匂い。抱きつかれたか、至近距離まで接近されたか…といったところだろう。
僕はサバイバーの調香師程ではないが鼻が利き、何となくその人物特有の匂いが分かる。…まぁ今回のは知りたくなかったが、と少し顔を顰める。
するといつから顔を上げていたのか、その顰め面のままAと目が合った。
「じょ、じょぜ、ふさ…」
僕の顔が怖かったのか、せっかく泣き止んだと言うのに、その瞳にまた涙が溜まってゆく。
『すまないね、怒っている訳ではないんだ。』
そう言って、抱き締めた状態のまま頭を撫でてやると緊張が解かれたように、僕に体を預けてきた。
そんなAを見ていると、君が何時でもこうして、僕の腕の中に居てくれればそれでいいのに。なんて馬鹿な事を考えてしまう。
『Aは、彼が怖いのかい?…大丈夫、彼からも…過去の忌々しい記憶からも、守ってあげるから』
守ってあげる、なんて嘘になるかもしれない。どうして嘘になるかなんて、分かりきったことだろう。
A、僕は何となく君の過去と彼との関係に勘づいているんだ。でも、君が僕の所に来てくれる間だけはこうして抱き締めさせてほしい。
青白い月明かりが、僕達を照らしていた。
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梨々華(プロフ) - ナ子さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉(無事昇天) (2019年3月28日 23時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
ナ子 - え、なに、展開がすごく気になるんですけど…。(死にかけ) (2019年3月27日 9時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
梨々華(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» ありがたきお言葉ありがとうございまぁぁぁぁぁぁす!!!!これからの展開にご期待くださァァ(うるさい) (2019年3月14日 19時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - うおあぁああ!?展開がァアァ!Fooooooo!!!この小説すっごい好きです!これからも頑張ってください!! (2019年3月14日 3時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
梨々華(プロフ) - カレンダー(2017/10)やばさん» おぁぁぁぁ...嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもシリアス投下して行きたいと思います笑 (2019年3月9日 13時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨々華 | 作成日時:2019年2月16日 16時