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35話 ページ38

…何かがおかしい。




『Aさん』


朝挨拶しようと呼び掛けても




『Aさん…?』


廊下ですれ違った時も





返事どころか、目すら合わせてくれない。





今まで過去の話をして、拒否する様な言葉を掛けられたことはあるが、普段この様に避けられた事は無い為、少しばかり不安になってしまう。






あの誰にでも隔てなく接する彼女が僕を避けている。この事はすぐに荘園内に広まり、女性陣は特に心配そうに僕とAさんを見ていた。





僕と彼女の関係を快く思っていないジョゼフさんすら、不思議そうな視線を送ってくる。





とにかくこのままではいけない。彼女と話そう。なぜこの様な事になっているのか分からない内は、接する事を控えた方が良いのかもしれないが。







『Aさん…!』




館内を探し回ってやっと見つけた後ろ姿。




長い廊下を歩いていたAさんは、僕の声を聞くと少し立ち止まって、僕に背を向けたままの姿勢で「…どうしたの?」と言葉を返してきた。





彼女が言葉を返してくる事は予想していなかったので、少し驚いてしまう。




『あの…どうして僕の事、…避けているんですか?』






暫しの沈黙が訪れ、流石何か言葉を紡ごうと口を開いた瞬間、明るい声が廊下に響き渡った。





「…避けているつもりは無かったの!不安な思いにしちゃってごめんね」




こちらを振り向いて笑いかける彼女は、いつも通りに見えた。





しかし僕は一つ、不可解な部分に気づいてしまう。その顔はいつも通りなんかではないという証拠。





『Aさん…、』




彼女に近寄って、顎から頬に掛けてのラインをするりと撫でる。




それに対して彼女はびくりと体を震わせたが、全く逃げる様子は無く、少し不思議そうな表情を浮かべている。





きっとこれが彼女の隠している秘密の鍵だろう。これを暴いたら深く傷つけてしまうかもしれない。





ごめんなさいと心で呟き、頬に触れている手を滑らせ彼女の後れ毛を掬うと、その髪で隠れていた肌が露わになる。









そこには、黒いヒビが深々く入っていた。

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梨々華(プロフ) - ナ子さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉(無事昇天) (2019年3月28日 23時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
ナ子 - え、なに、展開がすごく気になるんですけど…。(死にかけ) (2019年3月27日 9時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
梨々華(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» ありがたきお言葉ありがとうございまぁぁぁぁぁぁす!!!!これからの展開にご期待くださァァ(うるさい) (2019年3月14日 19時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - うおあぁああ!?展開がァアァ!Fooooooo!!!この小説すっごい好きです!これからも頑張ってください!! (2019年3月14日 3時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
梨々華(プロフ) - カレンダー(2017/10)やばさん» おぁぁぁぁ...嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもシリアス投下して行きたいと思います笑 (2019年3月9日 13時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梨々華 | 作成日時:2019年2月16日 16時

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