19話 ページ22
「緑間先生、急患の方お願いします。」
「…はい。」
あれから随分の時を経た。
今では父が院長を務める緑間病院で働いている。
「緑間先生、本当に優秀よね…！」
「ほんと、ほんと！しかも顔立ちも素敵…！！」
「…なーんて言われてたぞっしーんちゃん☆」
「はぁ、高尾。用もないのに来るなと言っているだろう。」
「真ちゃんに会うっていう用事だろー！？」
「黙るのだよ。」
「ぶっはは！！！！！相変わらずひっでぇな！！
つーかまだラッキーアイテム持ってんのかよっ！！
てかバスケしよーぜ！バースーケ！！
赤司が明日仕事休みになったからどうだって！
青峰は午前中に試合あるから遅れるらしいけどそれ以外は来るらしいぜ！！
真ちゃんも明日休みだろ？」
「…高尾。なぜお前が俺のスケジュールを知っている。」
「んー？まあ、チラッと、ってきなー！？」
「ふざけるなっ！！勝手に見るのではないのだよ！」
「ごめんごめーん！んじゃまった明日ー！！」
「…はぁ。」
一気に静かになり、冷静を取り戻す。
仕事机に座り、次の手術予定の患者のカルテを読む。
机の上にはAの写真。
彼女のおかげで今自分はここにいるのだ。
そっと写真を指でなぞる。
「緑間こっちの方の資料も目通しといてねー。」
「！…はい。」
「…まだ、忘れられないか。そりゃそうだよな。
まあいいけどな。いつか吹っ切れる時がくるさ。」
そう言って俺の頭を撫でたのは�爐△瞭�″の医者。
今は大先輩であるあの人の左手の薬指にはきらりと光るもの。
俺も、いつか�爐修了�″が来るのだろうか。
チラリと写真を見れば綺麗で可愛らしい笑顔の彼女。
自然と頬が緩む反面、もし彼女の�犧�″があったとしたのなら、彼女は何をしていたのだろうか、
隣には誰がいるのだろうか、などと考えてしまう。
「緑間先生、診察の時間です！」
「はい。…今行きます。」
行ってきます、A。
愛しているのだよ。
「頑張れ！」
「っ！？」
どこからか、懐かしい声が聞こえた気がする。
…きっと俺の中で彼女は生き続けている。
吹っ切れたとしても、ずっと。
彼女がいたからこそ今の自分があるのだ。
「…あぁ、頑張るのだよ。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：オーロラ | 作成日時：2019年8月9日 1時
