こんこん。 ページ30
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背伸びをすれば、届くような。
もどかしい曖昧な距離。
なのに、俺はいつも一歩を踏み出せないままで。
この気持ちは独り歩きするだけ。
「...伊野尾先生?もう、こんな所にいたんですか?
物理、教えてくれるって言ったじゃないですか!」
俺の存在なんて最初からそこに無いかのように、
伊野尾先生にだけ向けられた言葉と視線。
ちゃっかり、先生の袖を掴む「彼」
なぜだろう、
嫌な、予感がした。
「....あっ、ごめん!有岡くん!」
そうですよ、もう!と頬を膨らませながら言う彼が、有岡くんなのか。
袖を掴んだまま、先生を俺から引き離すように連れて行ってしまった彼。
俺が先生の手首をここで引っ張ったら。
彼はどうするのだろうか。
そんなこと、ハナから出来ないことは重々承知だが、気になってしまう。
先生はどんな顔をするのか、
彼は何て言って先生から俺を離すのか。
すごく興味があったのだ。
こんなことを考えている間には、もう彼と先生の姿は無かった。
ほら、今だって。
少し手を伸ばせば、引き止められたのに。
俺は、いつだって弱い。
。
知念たちに、有岡くんに会ったことを伝えた。
もちろん、階段で踏み外して先生の胸に飛び込んだことは言わず、先生と偶然会い、話していたら有岡くんが現れ、連れて行ってしまった。
と、話すと、
知念は、顔を真っ赤にしながら怒った。
「....本当に何なの、有岡!..子犬みたいな顔してるからって、ウチの涼介をないがしろにして!@&/#*?!」
あまりの怒りように、何か有岡くんとあったのか、と尋ねると、
「....何もない。あんなヤツに「くん」なんか付けなくていいんだよ!」とまた怒った。
何かあったんだな、と察して隣にいた裕翔に目線を送ると呆れたような顔をして、顔を縦に振った。
「.....裕翔は、何か有岡くんと話したりしたの?」
と、聞くと裕翔も俺と同じで有岡くんと話したことはなかったようだった。
ふと、思った。
いつも彼は先生に勉強を教えてもらっているのだろうか、と。
本当は、俺だって。ずっと、
彼は簡単に、とても自然に。
俺が越えることができなかった壁を、いとも容易く越えていく。
勉強を教えてもらうことも、見せつけるように先生を奪っていくことも、
きっと、俺にはできない。
もし仮に先生が有岡くんを好きだとしても、奪えやしないのだ。
ああ、恋は。
先生は、俺を弱くするから嫌いだ。
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konokuro(プロフ) - あひる☆さん» 1を最後まで読んで頂きありがとうございました^ - ^ 2も楽しみにしてくださいな! (2020年3月15日 21時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - konokuroさん» 移行に行こう〜〜〜♪わーわー。。どきどきっ。。 (2020年3月15日 14時) (レス) id: 15b8e56e15 (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» あひるん!!!コメントありがとうございます^ - ^ そんなこと言っていただけるなんて....!! こちらも早め早めの投稿を心がけます!^ - ^ (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - うさこさん» こんばんは。今回もお待たせいたしました...m(_ _)m そう思っていただけて嬉しいです^ - ^ そうなんです!複雑な感情と天気雨をかけてみました笑 晴れなの?雨なの?どっちなんだい!笑 (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - 複雑な心情を読ませていただきました〜〜♪はぁぁー・・よい!よいなぁ〜〜。ちねさんのきもちっ!!またまた楽しみにまっとりますぅ〜〜♪ (2020年2月28日 18時) (レス) id: f52dbdb7e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:konokuro | 作成日時:2019年6月22日 23時