第75話 ページ38
走り出した。
華ちゃんは、何も言えず、横を走り去った私の方を振り返り、手を伸ばした。
けれどその手は虚空を
仁兎と鬼龍先輩が後を追って走り出した。足音が過ぎ去り、華ちゃんは膝から崩れ落ちる。
そしてその大きな瞳を揺らし、涙が溢れて、流れて、降った。
水たまりを、その床にポツポツと、落としていく。
ワカがしゃがみこみ、そっと華ちゃんの背中に触れた。アヤトも何も言えず、その場に立ち尽くし、眉を下げて華ちゃんを見ている。
華「ど、して…」
若「…」
華「どうして、A先輩は、アイツを追うの」
若「原動力となるものが何かは、分かりません」
華「私の方が、A先輩をずっと見てきたし、ずっと知ってるし、ずっと、ずっと、大好きだったのに…!」
握り拳がワナワナと震えている。
その拳に、ワカの手が触れた。
若「華乃音ちゃん」
華「なに…」
若「私はいつでも華乃音ちゃんの味方です。華乃音ちゃんのためならなんだってやります。けれど」
くっ、と自分の手を握る手に力がこもった。
若「A先輩を傷つけることを華乃音ちゃんは本当に望みますか?」
華「………」
若「羽風薫のニュースを『利用』して、A先輩を引きはがすのは、皆無に等しいと思われます。そしてその弱みを『利用』すれば、いつか必ずA先輩は傷つきますよ」
華「そんなの!」
若「知っているのならば再度、問います。A先輩を傷つけることを、華乃音ちゃんは、本当に、望みますか?」
時間は刻々と進んでいく。
誰かが笑った。
「もうすぐ、もうすぐで、手に入る…」
不気味な笑い声が、天高く、昇っていく。
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顥(プロフ) - 千代さん» ありがとうございます。まだまだ未熟者なので、流石に人気は出ないですね…。もっと精進しなければ。これからも素晴らしい作品だと言ってもらえるように、努力しながら、更新頑張っていきます! (2018年3月12日 22時) (レス) id: 09070ac26a (このIDを非表示/違反報告)
千代(プロフ) - そう言いたいほど大変素晴らしい作品です。私自身、放送部の部長をしていて楽しめましたし、なにより内容が素晴らしい。羽風好きになりそうですなんかもう…有難うございます(←)これからも読ませて頂きます。更新頑張ってください! (2018年3月12日 0時) (レス) id: b14c7e5392 (このIDを非表示/違反報告)
千代(プロフ) - 初めまして。昨日この作品を見つけて読ませて頂きました。文が拙いし、長くなりますが感想を言いたいです。”なぜ人気でないんだ”。 (2018年3月12日 0時) (レス) id: b14c7e5392 (このIDを非表示/違反報告)
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