第54話 ページ16
羽風｢過去には、どんな作品を作ったの？｣
貴｢は？｣
苛立ちを含めた声を羽風薫に向けた。
羽風｢だって気になるじゃない。Aちゃんにとってこの作品がただのメモリーだとしても、視聴した人は違う｣
本人の
羽風｢俺は放送については何も分からないけど、何かが伝わったからこそ、こみ上げてくるものがあったよ｣
その意味は分からないけど、言葉にはできないけれど、何も無ければ何も無い。
『ただの感動』だけでは、人は涙しない。
羽風｢それだけは分かるよ｣
貴｢…｣
私の顔は今、困ったように眉を下げて、瞳を歪ませているのではないだろうか。
静かに棚から飛び出した白のハードディスクをパソコンに繋ぐ。
カーソルを動かして、ファイルを開いていく。
その中には、私が過去に作った作品がある。
貴｢これっす｣
ファイル名は、『
貴｢テレビドキュメント。主役にしたのは、現在、車いすバスケットボール日本代表選手の蛯原さんです｣
羽風｢えっ！？｣
私が彼女と出会ったのは、夏。
階段から落ちそうになったのを助けてくれたのが出会いだった。
取材に行く途中だったため、思い機材を壊さないようにと胸に抱え落ちる覚悟をした時、私を抱き寄せて一緒に落ちた。
膝を抑えながら、笑って大丈夫という彼女の表情に、恋に落ちるように心臓が鳴ったんだ。
貴｢待ち合わせの時間もあったので、私はお礼を言い、その場を離れました｣
強豪チームにいたエースだった彼女は、キセキの世代元エースそして、現在男子バスケットボール日本代表に選ばれ、大活躍中の青峰大輝と互角に渡り合った人物。
そして、膝に病気を抱えてもなお、立ち上がる強さに魅せられたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：�� | 作成日時：2017年10月28日 21時
