第100話 ページ23
OX｢やられたな｣
蓮巳｢ふっ…｣
五人の歌声に誘われ、かなりの数をグラウンドに集めた。最初からいるファンたちは、顔を汗と涙でぐしゃぐしゃに濡らしている。
視界がチカチカと光る5人の肩を抱き寄せて、
貴｢あんたらが、みんなを呼んだんだ！｣
朱桜の瞳が潤んだ。泣かないの、と瀬名が頬をムニムニと弄る。
貴｢そーよ。ステージ降りるまでは、ね☆｣
パチンとウインクしてあたしたちはみんなに手を振り、ステージを降りる。
この瞬間、感動を流すのはあたし達じゃなく、ファンの人たちだ。
誰よりも帰ってくるのを待っていたのは、ここにいる観客なんだから。
控え室となっている１年の階、空き教室で審査結果待ち。走る足音が近づいて扉を勢いよく開いた。
あんずちゃんと、明星だ。
あんずちゃんが、Knightsが一位だった、と息を切らして伝えてくれる。
OXの事件で観客動員数の勝敗は厳しいことから夢ノ咲式の判定にしたんだよね。勝てる自信が無かったけど、良かった〜。
安堵の息を吐き、あたしは流れた汗を拭った。
月永｢A、ありがとな〜！｣
後ろからガバリと抱きつかれる。なんだ〜？と振り返る。目に、涙を浮かべた月永の顔が見えた。
月永｢お前らも、ありがとなっ｣
瀬名｢…何言ってんのぉ？当たり前じゃん｣
ギュッと抱きしめて、瀬名は優しく微笑んだ。
瀬名｢A｣
貴｢ん？｣
瀬名｢涙を流すのは、嬉しい時も流すもんじゃないの？｣
貴｢へっ｣
幸せにできない。
いやきっと、今日はできたんだ。
泣かせてしまったけど、これは幸せの涙で…。
辛いことと同じくらい嬉しいことも、与えられているんだ。
そう、信じたかった。
でも現実は厳しくて、
それを知らせるバイブ音が、あたしのバッグの中から聞こえてくる。
送り主 �� 守
文面 ��
兄貴が、事故ったって。
ごめん、姉貴。
俺、何も守れなかったよ。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月25日 10時
