第79話 ページ42
OX｢っ｣
暗い夜。月明かり射し込む病室で、何かの気配を感じたOXは閉じていた目を見開いた。
すぐ横で感じる気配。だが身体は動かない。
｢…｣
暗闇から現れた姿は、七瀬だ。
赤い唇が光っているようで気持ち悪い。黒い瞳に映る月明かりはユラユラと水面のように揺れる。
七瀬｢うふふ…｣
冷たい手が、OXの頬を撫でる。ゾッとした寒気を感じてOXは七瀬を睨みつけた。
七瀬｢こんなにボロボロになっちゃって…ふふふっ愉快だわぁ…でも、死ななかったのは不愉快ね｣
耳元で囁かれる色のある声。
七瀬｢ねぇ、貴女は知ってる？｣
次の言葉は、OXの息を止めた。
七瀬｢Aが、死んじゃう方法｣
目を覚ました。
OXの視界には眩しい白い天井。夜ではなく、朝日が射す朝。
OXは呼吸器を外しゆっくりと体を起こす。額や首元はベッタリと汗で濡れ恐怖に小さく震えていた。
自分を抱きしめる。乾いた唇から小さな息が漏れる。
OX｢A｣
ベッドを降り、点滴のチューブを引き剥がす。裸足のまま病室を出、壁に寄りかかりながらおぼつかない足を滑らせた。
康人｢ふーん…Aも人使いがあらいよなぁ…？｣
あたしに頼まれてOXの様子を見に来た康人が覗いた部屋はもぬけの殻だった。お見舞いの康人お手製OXの大好物プリンが入った箱は自然と床に落ちる。
康人｢綾、ちゃん？｣
布団をめくるが誰もいない。トイレ、屋上、食堂、コンビニ…どこにもいない。
康人｢どこへ行ったんだ…｣
ポケットに入っているスマホのバイブが鳴る。
画面に映し出された文字。
OX[ごめん。うち、やる事あるから康人はそこ動かないで]
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
