第60話 ページ23
貴｢…｣
ごめん朔間と、あたしは朔間弟を無理やり起こす。肩に羽織っていたジャージを腰に巻き、レッスン室の扉を開けた。
瀬名｢A！｣
背中にかかる声。今度は立ち止まり、振り返る。
貴｢ちょっと、仲間の危機だから…いってくる｣
あの時のように、勝手には突っ走らない。
瀬名はあたしをしっかりと見つめ息を吐く。俺も行ってくるねぇと、メンバーに声をかけ扉を閉めた。
あたしが目をパチクリさせ戻りなと言うけれど、瀬名は首を横に振る。
瀬名｢あんた1人で行かせられるわけないでしょお？｣
貴｢でも、あんたには関係ないし｣
瀬名｢関係ある。あんたは、Aは、俺達の大切な
笑った顔は、いつも心をほっとさせてくれる。
こくりと首を縦に振り、あたしと瀬名は走り出した。
ついた場所は夢ノ咲学院から少し離れた病院。ロビーにいる見知った姿。守だ。
顔を青ざめ、あたしに抱きついてくる。体は震え、瞳がガタガタと怯えたように揺れていた。
守は瀬名に……頷き合う。任せろと言ってくれたのだ。あたしは一人、蓮に言われていた病室へと向かう。
扉をスライド。白い世界が映る。そして、そこには泣き崩れている赤と青の少女と、呆然とする蓮の姿。
自分の息が止まるのがわかった。
世界から音が消えたことに気づいた。
貴｢××？｣
何本もの線に繋がれ、口元には呼吸器。身体中には血で滲んでいる包帯と腫れて紫色になった肌。ストーレートの赤い髪がバッサリと肩上まで無くなっている。
ピッピっと機械音だけが耳に残っていた。かろうじて、あぁ、生きてるんだ。と実感する。
あぁ、死にそうなんだと、実感する。
貴｢OX…？｣
もう一度呼んだ名前は、自分でもちゃんと聞こえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
