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この間リッツに弾いてもらい、数日かけてある程度直した楽譜を持っておれは歩みを進める。
向かう先は普通科の音楽室。
お馴染みのパーカーにはフードがついていて、ほかの生徒から囲まれないためにもそれを深くかぶった。
「じゃーん！月永レオの登場だぞっ☆」
迷子になりかけながら辿り着いた音楽室の扉を開けると、そこにはすでにAがいた。
『…ん、早かったね。』
ピアノ椅子に座りながら、こちらを向き控えめに微笑むA。
そんな彼女の表情に、ドクッと心臓が鳴る。
「おまえ、泣いてたの？」
すぐさま駆け寄り、頬を包むようにして触れればわずかに涙の痕が残っていて『あはは、ばれちゃった？』とまた笑う。
大したことじゃないんだけど、と目を逸らしてじわっとその瞳にまた涙を浮かべた。
「噓つけ。我慢してんだろ。」
Aのことは何でもわかる…つもりだ。
ずっと一緒にいるんだ。そんなわかりやすいウソ。
セナなら黙って見逃すかもしれないけど、おれは敢えて理由を聞く。
『振られちゃった。』
ばつが悪そうにえへへと笑い、『大したことじゃなかったでしょ？』と続けた。
「大したことあるだろ。」
『え？……っ！』
ずっと頬を包んでいた手を離して、そっとキスをそこに落とす。
よく頑張ったな、って。そんな意味を込めて。
『な、、レオ、くん？』
キスをされたところに触れながら頬を染めるA。
どうやら涙は引っ込んだらしいな！うんうん、よかった！…全然よくないけど！
バクバクとうるさい心臓の鼓動がそっちに伝わってなきゃいいなって強く願いながら、おれはにへっと笑う。
そして膝をついて白くて小さいその手を取って、恥ずかしさからか揺れるきれいな瞳を見つめた。
「ちゃんと言うよ。おれはAが好きだ。ずっと昔から、今も変わらずおまえが好き。」
立ち上がり顔を近づけると、目をギュッと瞑るAについ笑みがこぼれる。
「＿＿＿だから、意識して。おれのこと」
耳元で静かにそう囁けば、直ぐに耳を覆っておれを凝視しては真っ赤になった。
ずっと意識してくれなかった分の仕返しと、これで少しでもおれの本気に気付いてくれたらいいな、なんて思ったんだ。
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作者名：なこ | 作成日時：2023年1月29日 20時
