ダメダメ鬼【逆ハ】

哀れな鬼 ページ29

…



とある鬼の話をしよう



その子はまるで小さかった、俺の掌で握りつぶせるくらいにはね。

でも、これで少しずつ成長しているんだというんだから
人はやっぱり不思議が多い


その子は、俺が鬼になる随分前から鬼になってたみたいで
いつも鬼舞辻様と行動を共にしていたようだった

その子の第一印象と言えば、無。

表情がまるでない、感情もあるか分からない

俺といい勝負じゃない？そうも思ったけど この子は可哀想って感情もないみたいだから

その時は俺が負けってことにしてた



最初はなんでこんな小さい子に感情が何も芽生えないんだろうって不思議に思ったけど

その疑問は直ぐに晴れた






『……ぐっぁ、い、』





どうやら鬼舞辻様はその子に折檻をしていたらしかった。それも 毎日、毎日

その子の人間味が強いのは知っていたから
回復速度も大分遅いのも分かっていた


でもその子、泣きもしない。涙も見せない

呻き声は漏れながらも痛いとは叫ばない


鬼舞辻様がなんの為にそれをするのかは俺も分からなかったけど


どうやら俺の計算違いだったみたいだ
この子は感情がないんじゃない

感情を抑え込んでるだけ。壊れないように我慢してるんだ！
抗っても死ぬことを本能で理解出来てるから、

ああ、可哀想だ。

何でかは分からないがこの時俺は心からゾクゾクした。こんな哀れな鬼もいるのだと

人ならず、鬼までも、なんて 可哀想


うん、決めた。この子は俺が守ろう

いつまでもいつまでも哀れな鬼で、そのままの姿でいてほしい
そう俺は願ってやまなかった


だけどその子は少しずつ変わっていった。


まるで本当に人間見てるみたいだった
歳をとる速さは人間とは比べ物にならないくらいはおそくとも

歳をとって成長している事実は変わらなかった






『ひっぐ、いたい、やめて、いたい！』





「…ああ、」





俺はその子が歳をとるごとに痛みに対しての反応を確かめた

歳をとるにつれその子は泣くことを覚えた

幼い子の鳴き声はうるさい、耳をつんざくようで俺は嫌いだった
どうやらそれはあの方も一緒だったみたいで

泣けば折檻をやめた。

そうしたら痛みを感じるとすぐ泣くようになったその子を見てまた哀れだと思った

そこまでして痛みを嫌うのはなぜなんだろう。
人間に近いから？

ああ、そうか

君は鬼にもなりきれないのに人間にもなりきれないんだね。

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